ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

自らで特別を規定する

恋愛に限らず広く一般に、特別とか運命とかって、ある日どこかから突然降ってくるもので、出会ったときから特別だ、運命だ、って雷に打たれたようにわかるものだと結構最近まで思ってました。

 

そういうものに、幼い頃に物語を通じて触れて、憧れて、だけど現実世界での実現性がなくて、だから自分の人生において、特別とか運命って訪れないものだと思ってました。

 

最近新たに、そうじゃないことを物語から教えてもらいました。出会ったときは何でもない、普通な関係性でも、そこからゆっくりと特別になっていくこともある。そういった中では、直感によって特別が規定されるとは限らず、自らの意思で、自分の特別を規定することもできるのだと。

 

以下、特定作品のネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

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冴えない彼女の育てかた」の最終章であるfineを観ました。設定や話の流れなどがかなり特徴的な物語なので、アニメからかなり間が空いたように思うが、観始めたらスッと思い出した。

 

1回観ただけなので正しくないかもしれないが、恵が想いを周りに吐露するシーンがとても心にきました。倫也が、他の人にとって「特別」で、しかも必然と言えるような理由もあって、だけど自分にとっては「普通」から始まっている。そこがたぶんずっとネックだったのだと思います。

 

そこから、自分の意思で倫也を自分にとっても「特別」だと決めて、他の人に立ち向かうだけの勇気がすごい。「他の人にとって特別だとしても、だから何なの、そのことは私と倫也くんのことには何の関係ない」という台詞だったと思う。本当に仰る通りです。自分の想いや関係性は、他人のそれと相対的に比べるべきものではないのだ。

 

今回の大きなテーマからは外れてしまうが、この作品のもう一つ凄いところは、創作物語と現実の融合であると思います。この物語の中でも、製作しているゲームと倫也と恵の現実世界での話が並行して進んでいくのがとても自然でよかったです。

 

さらにはこの作品と我々における現実世界との融合で、随所に散りばめられているメタ発言は白けない絶妙のバランスで差し込まれているし、何より最後の最後の「お疲れ様でした」のくだりはこの作品らしさを十二分に表しているとても良い締め方だな、と思いました。

 

話を戻しつつ進めると、最近完結した「やがて君になる」でもとても印象的な台詞がありました。ちなみに「やがて君になる」は、百合を題材としつつも、必ずしも百合ということに重きを置かず、キャラクター達の心の変化と決断に重きを置いた素晴らしい作品でした。

 

最終巻の告白のシーン。侑の「わたしは 先輩がわたしの特別だって決めました」がかなりグッときました。侑は、はじめ特別がわからなくて悩んでいて、あっという間に特別を見つけてしまった燈子が羨ましくて仕方ない。ただ、燈子と過ごしていく中で様々な決断をし、その過去の自分の決断を振り返ることで気付く。自分の意思で、燈子を特別だと「決める」というこの力強さよ…!

 

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お恥ずかしいことにお気付きだと思うけど、自分はまさしく侑のような考えの人間だった(ただし、これに触れるまでこのように言語化することはできていなかったが)ので、とてもこの作品達に大丈夫だよ、と言ってもらえた気がします。

 

この2作品はどちらも恋愛の枠の中の話だけれど、それを含めた一般的な物事に言えることだと感じました。特に、何か新しいことを始めようというときなど。

 

私は、特別や運命が降ってくるように努力するべきではなく、自分の特別を自分で掴み取ることができるように継続力と力強い決定意思を持てるように努力するべきだ、と思うようになりました。

 

ただそれでも、どこかから特別が降ってくることを期待せずにはいられない自分がいるので、かなり拗らせているのだと思います。