ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

ゴキブリキューブ、ダメ。ゼッタイ。

森見登美彦さんのことは、知っているようで実はあまり知らないニワカです。アニメを観てから「四畳半神話大系」を読み、続いて「夜は短し歩けよ乙女」を映画化のだいぶ前に読み、「恋文の技術」を読んだ所で終わっています。

 

今回読んだ「太陽の塔」は、森見さんのデビュー作ですが、私が思うところの森見節が最高に効いた文体でした。妄想成分が多めで、さらに本筋から脱線することも多いので、なかなか話の流れが見えにくいですが、それも含めて楽しむことができました。

 

これまで読んだ3作の中では、「夜は短し歩けよ乙女」に近いので、これが好きな方にはオススメできます。初めての恋人に振られてしまって拗らせに拗らせた男子大学生が、同じく拗らせた周囲とさらに拗らせていくお話です。

 

以下、気持ちネタバレを含んだ感想です。

 

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水尾さんに振られたことをきっかけに、恋愛を一時的な幻想と断じ、水尾さん研究を始めてしまうその姿は、誰よりも恋愛に拘っている証拠である。

 

拗らせすぎている身としては、反面教師というか、というより自分を客観的にみているようで(もちろん研究と称したストーカーや「ええじゃないか騒動」をやる気はないが。)、染みました。

 

それに、本筋から離れて半ば錯乱状態でなされる主張たちが、案外的を得ていて読んでいて飽きないのが森見節の魅力の一つだと私は思っています。

 

今作の主人公のいい所は、拗らせて暴走している自身を心の奥ではしっかり自覚しているのであろうということです。同じくストーカーまがいの遠藤の背中を押してしまうといったような所にそれが表れていて、なんとか立ち直ろうともがいている。これだけ行動力のある人ですから、いずれ前に進んでいけるのでしょう。

 

もはや最後の方は夢か現か分からないし、太陽の塔にもいろんな意味が込められているのだろうけど、そこまでは今回読み取れませんでした。

 

ゴキブリキューブだけは誰も幸せにならないのでやめましょう。以上です。