ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

『なんだ、そのガイジンみたいな頭は』

山本文緒さんの「アカペラ」を読みました。

 

凪良さんが先日のトークショーで紹介されていた作品の一つです。

 

山本文緒さんとは初対面でしたが、一気に引き込まれました…。田辺聖子に続いて、早くもまた新たな天才と出会ってしまいました。

 

三作とも好きですが、やっぱり表題作が一番好きかな〜。

 

いずれも、一言では言い表すことができない情愛の関係性がテーマになっています。この言い表しにくさがいいんです。

 

では、以下は作品ごとに簡単にネタバレありで感想を。

 

 

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【アカペラ】

たまことじっちゃんの情愛。切なすぎますね…。このお話ではあんまり出てこないけども、客観情報だけで人を判断する人にはなりたくないと思いました。

たまこはきっと、頭では世間一般的な価値観も理解しているし、それがきっと正しいのだという風に思っている。じっちゃんの情愛は、たまこ自身ではなくまあこさんに向けられたものだというのも頭では分かっている。でも、頭で分かっているからといって、それを受け入れなければならない時の痛みがなくなるわけじゃないんです。それはそれとして、きちんと痛いのですよ。とても切ないです。

 

【ソリチュード】

ダメ男が何故かモテるハーレムストーリー、と言ってしまえば身も蓋もありませんが、これもアカペラとおんなじだと思いました。ありきたりだからと言って、その気持ちが嘘なわけじゃないし、軽んじていい気持ちでもないと思うのです。

それにしても、最後の締め方といい、典型的な優柔不断のダメ男感がすごいですね。

 

ネロリ

姉弟を中心とした複雑な情愛でした。「気持ち悪い」って、めちゃくちゃ主観的ですよね。いついかなる時も他人に対して使ってはいけない言葉だなと思いました。

ラストはグッと来ました。意外な関係性もそうですけど、ココアちゃんの決意の固さが。

人生がきらきらしないように、明日に期待しないように生きている彼らに、いつか、なくてはならない期待の星になるために。心を温める名前のあたしが。