ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

『あんた、人生の無駄遣いやがね』

町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」を読みました。

 

本屋大賞ノミネート作品8作目!10作読破の目処が完全につきました。

 

テーマは「家族の呪縛」「多様性への無理解さ」「共依存」で、私の大好物ですね。彩瀬まる作品と雰囲気がちょっと似てると思ったら、彩瀬さんと同じ賞出身の方でしたか。

 

上記テーマへのスタンスは主に2つあると思っていて、相互理解を深め、すべての人間が多様性を認め理解すること("正しさ")を諦めない派と、諦めたうえで互いに心地よく生きることを推進する派?

…日本語難しいですね。とにかく前者は彩瀬さん、後者は凪良さんが代表されると私の中では思っていて、今回の町田さんは彩瀬さん寄りだったな、と思いました。

 

中盤にかけてめちゃくちゃ重い展開が多いです。でも、徐々に明らかになっていく主人公・貴瑚の過去が読ませる読ませる。一気に読んでしまいました。

 

終盤は一気に明るいところまで引っ張り上げられて、本当に一番きれいなところで物語が終わります。救われた気持ちになる反面、こんなきれいな状態が続くことはないんだろうな、と思ってしまったのが正直なところです。「私の男」を知ってしまっているせいですね。

 

総じて、とても引き込まれる作品でした。

 

以下、ネタバレありで少しだけ。

 

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【家族の呪縛】

本作は家族という存在に振り回されている人が多く登場しますね。家族って、本当に特殊なコミュニティだなぁと感じます。

本作は、主人公側に対峙する側を完全に近い悪として描いている感があり、そこに少しご都合感を感じてしまいましたが、色んな展開に直面した時の各登場人物の心情描写は丁寧で、息遣いが感じられるものだったので良かったです。

 

この主人公側に対峙する側のなかに自分を見つけてしまうのが、湊かなえ作品なんですよねぇ…。

 

【多様性の無理解さ】

これもかなり両極端に描かれすぎていて(無理解な人はとことん無理解だし、味方は圧倒的に味方)、重い展開になっている一因ですね。

 

アンさんへの母親の対応がしんどすぎた……こういうのって、どうすればいいのかな。

 

共依存

貴瑚と愛の共依存をメインに、依存関係の繋がりが多々ありましたね。個人的解釈では、美晴は貴瑚に依存しているんだと思っています。

 

貴瑚と愛の二人で考えた時に、あの境地に達するまでの道のりが、もう少し欲しかったな〜と思ってしまいましたが、貴瑚にとってはアンさんとの関係からずっと繋がっていて、そこの蓄積分があるんだろうな、と思いました。

 

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願わくば二人が、互いが互いを支え合うような存在であり続けることを願って。

ここの葛藤を次回作としてくれるととても楽しみになります。