複数の小説家さんが上記タイトルをテーマとした短編を寄せている作品です。凪良さんがそのうちの一人なので、喜んで読みました。
テーマの通り、スパイスの効いた面白いミステリ集でした。「非日常」とわざわざ銘打っていることで、単なる超次元的展開というのではなく、「日常の中の非日常」のような作品が多く、個人的に好みでした。
背表紙のあらすじで、「コロナの非日常を乗り越える力となると〜」と買いていますが、正直そういう感じではなく、単純に面白い短編ミステリとして読んだ方が楽しめると思います。
凪良さん作品は言わずもがなですが、本当にどれも甲乙つけがたい感じです。
では、短編ごとにネタバレありでみていきます。
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【十四時間の空の旅】
辻堂さんは、お名前は聞いたことがあるのですが作品としては初対面でした。
高校生の未完成さがよく現れた作品でした。この学生特有の価値観、描くのが上手いですね〜
【表面張力】
凪良さんです。さくら荘ファミリアの外伝ですが、キャラが少し絡むだけで本編とはまた違った味わいでした。
色々な価値観を肯定していきたい凪良さんだからこそ、語り手がコロコロ変わっても違和感なく読み進められるというか。
メインの登場人物がこれくらい多い作品もまた読んでみたいなぁ。
各自の思惑が複雑に絡み合って、なんとか表面張力(ほのか)のおかげで保ってる、このヒリヒリ感よ…最高です。
女性が、押し付けられた女性らしさを受け入れた先での幸せを肯定する価値観まで描けるとは…恐れ入ります。
【これは運命ではない】
この九郎は別作品でも出てくるんですかね?そんな雰囲気がしました。
安楽椅子探偵もの!答え合わせはしないタイプのやつですね〜。最期の霊のくだりが本当だったりして。
【どっち?】
こえ〜〜〜!ヒューマンホラーものと勝手に呼んでいるものに近い。そこまで行動を予測できるなんてよっぽど愛されてますね…。
【成人式とタイムカプセル】
青春ほろ苦ストーリー!古典部シリーズみたいな雰囲気でした。
この二人の空気感最高だわ…というかやり取りがカッコいいわ…。
【この世界には間違いが七つある】
間違い探しの世界て…芦沢さん天才かよ……。
芹沢さん作品は、私個人としてはいつも設定先行型のように感じちゃう(登場人物が設定のために動かされてるように感じちゃう)んですけど、今回ばかりは設定が天才すぎて、そんなこと気にしてらんないくらい楽しめました。