ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

余韻最強短編集

田辺聖子さんの「孤独な夜のココア」を読みました。

 

バリバリ恋愛小説の短編集でした。今回もまた、田辺聖子さんの天才ぶりに感嘆するしかありませんでした。

 

昭和58年…私が生まれる前の時代にこんなものを書いて、令和になって読んだ私をブッ刺してくるのはどういうことなんでしょうね…田辺聖子さんに全てを見透かされてる感がすごくって…。

 

私が、自分に都合の良い解釈をしている側面が大きいのだとは思いますが。

 

今回は特に、1つ1つが結構短いのに、すぐに感情移入できる、かつどれも余韻が最強すぎました。

 

以下、ネタバレを含みます。いつもに増して、自分のためだけの感想です。

 

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今回は数が多いので、印象的だったものだけピックアップします。

 

【りちぎな恋人】

これは、もううまく表現できないんだけど、すごかったです。私はどっちに自分を投影してんだろうな…。

ラストの一文がやばすぎる。

りちぎな私は、私のもくろみをりちぎに実行することしか考えていない。

 

 

【雨の降ってた残業の夜】

中盤まではぇ〜って感じだったけどラストで一気に持ってかれましたね。

これもやっぱりラストがやばすぎる。

恋というものは、生まれる前がいちばんすばらしいのかもしれない。

 

エープリルフール

なんなんこいつら……。なんなんこの情緒……

 

【愛の罐詰】

愛の罐詰という表現が最強すぎました。

 

【石のアイツ】

これもやっぱりラストなんですよ。

世間の風が舞い込んだとき、その幸福は石になったのだ。

 

【中京区・押小路上ル】

この空気感が狂おしいほど好きです。

 

【まとめ】

田辺聖子さんの作品をいくつか読んで、私自身について少し分かったことがあります。(予め言っておきます、気持ち悪いです)

 

 

前からなんとなく感じてはいたのですが、私、いわゆる"恋愛における男らしさ"を持ち合わせていません。田辺さんをはじめとする色々な方の恋愛小説を読んでいく中で、いわゆる"恋愛における女らしさ"に近い価値観を持っているのかもしれない、そう思っています。

これは、性自認がどうこうという話ではなくて、価値観という側面のお話です。恋愛に対する価値観が、社会通念的にそうあるべきという"恋愛における男の価値観"とあまりにもかけ離れている、という話です。

それがこれまで、言ってしまえばコンプレックスで、どうやってその"男らしさ"を身につけるか、演じるか、ばかり考えてきました。そうでなければ、恋愛という土俵には一向に立てないのだ、と思っていました。

でも、結果からいえばそれを身につけるのは無理、というかストレスフルでした。経験が少ないからだと言われればその通りなのですが。

田辺作品と出会うことで、いずれにしても、現段階で私の目指す方向性は別にあるな、と教えてもらいました。

ずっと「頑張る、自分から行動する」≒「男らしさを早いところ身につける」だと思っていた節があるので、なんかすごく腑に落ちてスッキリした気分です。