ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

推定少女

桜庭一樹さんの『推定少女』を読みました。

 

桜庭さんお得意の家出少女です。本作はザ・桜庭作品といえるくらいな描きっぷりでありつつ、結構大掛かりなSF要素も入っており、とても楽しめました。

 

中高生の、中高生特有の息苦しさをこんなにも鮮やかに、そして自然に物語として昇華できるのは桜庭さんしかいないんじゃないかと思います。

 

少女には向かない職業』の亜種というか、SF作品として表現したバージョンのように感じました。

 

以下、一応ネタバレありの感想です。

 

 

--------------------

 

父親を殺してしまった(実際には死んではいなかったけど)カナと、宇宙人少女・白雪の構図は、やはり『少女には向かない職業』を彷彿とさせます。

 

ただ、『少女には〜』では罪の重さに耐え切れなかった部分を、今回はSFでうまく昇華している風に思いました。

 

メタいけど、千晴は、桜庭さん的にどういう意図があったのかなぁ…もっと読み解きたいと思った部分です。

 

中高生の頃の表現し難い焦燥感を思い出します…。今の価値観を持っていたら、と想像しますが、たぶん無理ですね。中高生の頃の環境では受け入れるだけのものになりようがありません。

 

エンディングは正直、1の放浪が断トツなんですよね。

ああ、これは子供の言葉だから、いくらでもうなずいていいんだ、と思った。

非日常に迷い込むエンド。大人になりたくないエンド。最高です。

 

でも、2と3のエンディングがあるからこそ、見えてくる景色もあるわけで。

それは遠い未来、ぼくがかつてぼくだったことの証となるからだ。

大人になってぼくがぼくじゃなくなるエンド。我々の生活に近い所へと昇華していくエンド。

 

ところでタイトルの『推定少女』は何を指しているんだろうか…。

推定無罪から来てる…?ならば単に白雪のことをさして言ってるのかな…?もう少し深い意味を探らずにはいられないですが。