これは小説ではなく、桜庭さんが私的につけている日記をまとめ上げたものになります。ちょうどコロナが流行する前の2020年1月から、2021年1月までの期間を断片的に流れていくものになります。
あんまりネタバレどうこうという本ではないですが、以下一応ご注意を。
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歴史には、正史(国家による歴史)と、稗史(我々庶民の日々の歴史)があるという。いまの、不安で寄る辺ない、この一日一日こそ、かけがえのない稗史なのだと思う。(p30)
この本は、まぎれもない稗史だと思いました。 この1年、目まぐるしく状況が変わっていきましたが、その中を生き抜いた我々庶民の中で話題となった出来事、風潮。そこに、桜庭さん自身とその周囲の方々の暮らしの様子が合わさって、少なくとも桜庭さんにとっての"リアル"がありありと切り取られていました。
非常に共感性高く読むことができました。あぁ~この時こんな話が話題になっていたなぁ~というのが、まさしく日記って感じでよかったです。
随所で”分断”という文脈でもって社会を解釈する場面が見られます。私、個人的には"分断"という表現が大嫌いです。人間による恣意的な分類を助長させるからです。でも、桜庭さんのいう"分断"も理解ができますし、実際それに近い状況であると言わざるを得ないんだろうな、と思いました。
コロナによる変化は不可逆であり、コロナ前を復旧地点とみなすべきでないということを、私も社会も、そろそろ受け入れねばなりません。ということだけは声を大にして言えます。