覆面作家シリーズ、堂々の完結です。ずっと勿体無くて読めていなかったのですが、ようやく意を決して読みました。
はい、最高でした。北村薫さんの創り出す世界って、めちゃくちゃお洒落なんですよね。会話の洗練された感じとか、展開の鮮やかさとか。落語みたいな(落語のことそんなに知らんけど)。ものすごく一つ一つの完成度が高いんですよね。今回は特にそれが際立っていたし、千秋さんというキャラクター性のおかげで他作品よりも親しみやすい雰囲気でもあったと思います。
とりわけ、ラストのオチですよね。シリーズを通してジワジワ進んでいた話の落とし所として、最高すぎてエモエモのエモでした(エモエモのエモってそんなに知らんけど)。とにかく、今年ではぶっちぎり一番の読後感でした。
では、ネタバレありで感想を。
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【謎の写真】
千秋さんと良介ポイントは、ペンギン一択ですね。なんなんこの微笑ましさ…。
謎ポイントは、伏線の鮮やかさですね。《去年、マリエンバートで》のくだりが効いてくるとはね…。
【目白を呼ぶ】
謎ポイントは、複数の伏線が複雑に絡み合って発生した不運感。湊かなえさんの『リバース』を思い出しました。金山さんの思考回路はよく分からなかったけれど、トリックはとても鮮やかでした。
千秋さんと良介ポイントは、ラストももちろん良いのですが、別荘への迂遠なお誘いのくだりですね。なんなんこの匂わせな感じ…。
【夢の家】
謎ポイントは、「こんなん分かるかい!!(笑)」ですね。まぁでも、北村さんの他作品で鍛えられているのでなんということはなかったです。物語の中でもかなり調べ物をしていましたし、ヒントは提示されてはいましたし。
千秋さんと良介ポイントはもちろん最後のオチですよね。
【最後のオチ】
『お屋敷でもない、外でもない。きみは、どこにいるんだい』
『ここ。……わたしの家に』
あーーー!完璧!!鮮やかすぎます!!!
タイトル回収、そして千秋さんと良介の関係性を描いたオチとしてこれ以上ないですよ。
結局、千秋さんが外弁慶であった理由は語られずじまいでしたが、まぁそれもそれで趣深いかなと思いました。千秋さんのミステリアスさも、一つの魅力だったので、ミステリアスさを残したままというのも良い終わり方です。
それに何より、外弁慶である理由は当然過去にしかないはずなので、それよりも今、外でも内でもない、家の千秋さんが誕生して、未来に向けた変化で締め括るのは、最高なんじゃないでしょうか。
【まとめ】
最高の最終章でした。読後の幸福感がやばいです。
今後も定期的に北村さんの鮮やかさに打ちひしがれたいです。