ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

異形性変異症候群

黒澤いづみさんの『人間に向いてない』を読みました。

 

随分前に、たしか彩瀬まるさんがTwitterでオススメしていたので知って、ずっと気になっていたのですが、ようやく読めました。

 

知識は全くないのですが、ちょっと特殊な作品に贈られるというメフィスト賞受賞作ということで、あたらしい世界を見せてくれました。

 

とはいえ、基本的なテーマは普遍的で、家族という特殊なコミュニティについて、無理解について、マイノリティについて。

 

続きの気になる展開で、読む手が止まりませんでした。

 

以下、ネタバレありで少しだけ。

 

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全体を振り返ると、個人的にはですが、もう一つ深いところまで行けるとよかったなぁと感じました。

 

異形性変異症候群については、本作の特徴の一つであると同時に、謎多き病でした。

まだ文章だからよいのだけれど、相当に気持ちの悪い見た目なのだと思うので、僕には無理そうです。愛とかそういう話じゃなくて…。

 

結局、主人公の親子以外は絶望の結末を迎えているので、彼女らのことを思うとやるせなさがすごいです…。紗彩と津森さんとか…。

 

親はいつまででも親だし、子はいつまででも子なので、互いが寄り添うために変わっていくというのだけではなくて、今のままでの昇華の仕方も欲しかったなぁと思ってしまいました。許す許さないというのは、家族では中々…。

 

また、美晴と敵対する方々(夫と姑)がほぼ完全に近い悪として描かれているのも、もう一歩、そちら側の正義も、もう少し丁寧に描いてくれたらなーと思いました。信念を持った敵キャラであって欲しかったという感じです。

 

珍しく気になった点ばかり並べてしまいましたが、前提として面白い作品でした。普段私があまり読まない雰囲気の作品で、とても新鮮だったし、非常に読ませる展開でした。