竹宮ゆゆこさんの『応えろ生きてる星』を読みました。
竹宮ゆゆこさんの作品(一般文芸)のまだ読んでない小説は、本作を含めてかなり前からすべて積読しています。でも、もったいなくてもったいなくて…!竹宮ゆゆこ成分は貴重なのですよ。
最近竹宮ゆゆこ成分の欠乏を感じたので、本作を摂取しました。本作はその要望に120%応えてくれました。圧倒的な竹宮ゆゆこ味。1日で駆け抜けてしまいました。
前半のジェットコースター展開はいつもに増して過激で破天荒。でも中盤から終盤にかけての盛り上がりは凄まじい。あんなに散らばっていたものが一気にまとまっていくスッキリ感もある。毎度のことながら、一生懸命生きる登場人物たちを応援したくなる、竹宮ゆゆこさんらしい作品でした。
既読の作品に比べて暗喩が少なくなっています。暗喩として出てきていたものも、終盤にかけて分かりやすく説明されていますし、効果的な使われ方をしているので、多くの方がすんなり受け入れられるのではないかと思います。
よって、竹宮ゆゆこに興味のある人が初めて摂取する物語として、本作はオススメなのではないかと思います。
序盤のジェットコースター展開は相変わらずですが、ぜひ振り落とされずに最後まで駆け抜けてください。そして竹宮ゆゆこ成分なしでは生きられない人間になりましょうね。
以下、ネタバレありで感想を書きます。
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シーン別に感想をかいてみます。
【出会い〜再会】
出会いのシーンと満優の失踪シーンは、ザ・ジェットコースター。怒涛の伏線敷き敷き展開です。ただ本作は終盤で分かりやすく回収されている伏線が多いので、比較的親切設計ではなかろうか。
あと本筋とは全く関係ないけれど、"朔"という名前にちょっとした想い入れがあるので、不思議な気分で読みました。
そして再会シーン。パフェにフライドポテトはちょっと意味がわからない。『砕け散るところを見せてあげる』でもそうだったけど、出会いと再会(2回目)で印象がとんでもなく変わるのよね。神秘的な雰囲気だったのに、急にコメディタッチな雰囲気になるというか。これがいい感じにエンタメ感を引き込んでいてよい。シリアスとのバランスがよい。
【デートの日々】
2人の絶妙な雰囲気、よい…。ここはまさしく『とらドラ!』と同じような展開。『とらドラ!』との類似度もあり、朔は満優の駆け落ち相手の恋人なんだろうな、と思ってはいました。
【朔の家〜終盤】
警察のお世話になってこじれまくる2人ですが、ここから終盤にかけての盛り上がりがとてもよいですね。朔の実家に強行遠征し、いままで謎に包まれていた朔についての伏線がきれいさっぱり回収されていきます。
父親への口上もとてもよかったし、それに素直にお礼を言える朔がかわいい。
あの再会の夜の、感情をぶつけるくだりが朔の心を動かしていたのもよいし、廉次くんには本当の自分の気持ちをさらけ出せるのも、よい。
星を投げるくだりの、終盤での効果的な使われ方がすごい。朔が蒔いた伏線を廉次が回収するの、とても鮮やか。桃白白をぶっこむのは流石竹宮さんといった感じ。
そして本作は、2人の恋愛というだけではなくて、2人それぞれの夢の話も印象的でした。2人とも過去の出来事に区切りをつけて、前へと進んでいく。このあたりは、橋本紡さん味を感じました。
満優と再会のくだりはビックリした。もうこのまま流れてしまうのかと思っていましたが、夢と同じように、きちんと一区切りつけてきました。
【廉次くん】
常に誰かにマルをもらわないと前に進めないというやつ、彩瀬まるさんの『あのひとは蜘蛛をつぶせない』とテーマが似ています。私もかつて、もしくはいまもここに居ると思います。
【朔】
とても大人しめの大河という感じです。ボケもツッコミもこなせるところがかわいいです。
【まとめ】
本当に縁って不思議だなと思います。人間って素直な生き物ではないので、出会い方やタイミングによって全然違う関係性を築きあげますね。そういったものも全部含めて、運命・縁ということなんでしょうね。
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うーんやっぱり人物ごとに感想かいたほうがまとまる気がします。いろいろ試してみます。
さて、残りの竹宮ゆゆこ作品は、先日刊行されたものを含めて2作品です…。ゆっくりじっくり味わいたいが、年末あたりにもう1作読んじゃいそう。本当に、他とは違う栄養素なんですよね。