青山美智子さんの『赤と青とエスキース』を読みました。
青山さん作品は3作目です。本作は最新作なのですが、青山さんがTwitterでRTしていたプルーフ本の感想が気になって、買ってしまいました。販促に見事引っかかっています。
これまで読んだ2作と共通する暖かみがしっかり感じられる作品でありつつも、恋愛の切なさと、作品としての大きなサプライズが足されていました。『木曜日にはココアを』と同じく、連作短編なのに華麗な着地を決める感じが流石です。
では、以下はネタバレありで書きます。
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短編ごとに見ていった後、全体について触れます。
【金魚とカワセミ】
『始まれば終わる。』という書き出しだったのが、最期には『終われば始まる?』となっていく流れがとても良かったです。この短編一つでも十分完成されていると思います。
最後の見つめあう描写がとてもすき。
【東京タワーとアーツ・センター】
青山さん作品には、徹底した悪役が居ないのが、とても安心します。ジャックとの思い出を大切に生きてきて、夢の実現にまっすぐな空知が好きです。
【トマトジュースとバタフライピー】
師弟関係のお話はとても新鮮でした。他人からみた自分の印象って、一生自分自身じゃ分からないんだろうな、と思いました。でも他人からみた自分の印象を知ることで自分自身を知ることにも繋がるのですよね。
【赤鬼と青鬼】
この作品も、普通に単体の短編として、とても満足感の高いものなんですよ。リリアルのオーナーさんすごい人だし、二人のもどかしさも可愛らしいし(50代であることには目を瞑る)。
それなのに、ラストのネタバラシよ…。一気にブワッてきました。
事前情報をほとんど入れずに読んでいて、オビ文すらまともに読んでいなかったので、仕掛けがあること自体最後まで気づいていませんでした。これまでの人物のその後はまとめてエピローグで語られるのかな〜?とか呑気に考えていました。
【エピローグ・全体】
ジャックの語りを通して、全体のネタバラシが行われます。ひぇ〜〜!想像以上の仕掛けでしたね。どの短編にも2人が登場していたとは…。
基本的には異なる人々のお話を読んでいたつもりが、同時に2人のその後も読んでいたのだ、ということに、読み終わった時に気づく。こんな体験なかなかできません。
気持ちの良いどんでん返しであるとともに、どんでん返し自体が目的になっているわけでは決してないところがとても心地よいです。
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本作も大満足でした。青山さんは引き続き読み漁っていきたいです。