ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

柴田勝家P

柴田勝家さんの『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』を読みました。

 

柴田勝家さんの『ニルヤの島』に出会わせてくれた友人からの、柴田勝家2作目としてのオススメ作です。

 

本作は表題作の短編1つと、限界ヲタクPの活動日記がついています。

 

気になった方はぜひ、以下の記事と、記事についている動画をみてください。トラウマものです。

 

ネタバレというほど核心には触れていませんが、以下感想を書きます。

 

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雲南省スー族におけるVR技術の使用例』

生まれた時からVRゴーグルをつけ、VR世界で一生を生きる一族の観察記録です。VRは最近のSFにとってはメジャーな要素なのだろうけど、ほとんどSFを読まない私にとっては非常に新鮮に読めました。

 

VR世界と現実世界の対比が良かったです。互いに互いの世界を認知はしつつも、体験したことはない。体験したことがない世界は果たして、存在しているといえるのだろうか?そんな哲学的な問いを投げかけてくるわけです。

 

我々の世界が一秒ごとに連続してつながっていると果たして言えるだろうか。

スー族の逸話を現実世界に落とし込み、これまた哲学的な問いを投げてくる。いいですね。

 

そして、最終的には現実世界そのものに話が拡張されていく感じがとても面白かったです。オンラインで講義をしている先生と生徒の問答など。

 

最終的には話の枠を超えて、本当の現実世界へこの哲学的な問いたちを持ち込んで考えてしまいました。私の人生とはあまりにも不連続な人生を歩む人々が日本にも日本以外にも沢山います。その一部は知識として認知しているけれど、体験していないそれはどこまでいっても他人事で現実感が感じられない。だから、いま私があらゆる場面において役に立つと思っている価値観も、その人生ではまったく歯が立たないのだろうな、と思いました。

 

総じて、認知と体験の間にそびえたつ壁、について印象が強く残りました。作者の顔は思い出さずに最後まで読めました。

 

『星の光の向こう側』

一瞬で、作者の顔と、例の動画を思い出してしまいました。ただの限界ヲタクルポでした。冒頭のパワーがすごい。

 

ここで語られるアイマスはほとんど知識がないのですが、とにかく作者の心が突き動かされていることはよくわかりました。

 

あの見た目、このペンネームで、一人称「ワシ」は完全に出来上がっているのよ…。

 

VR世界と現実世界が逆転している感じは前半の短編との共通点ですね…。前半と絡めて綺麗に締めようとするな。

 

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名前も見た目もなにもかも、作者の何もかもがインパクトが強く、なかなか忘れられません。他の作品も読みたいのですが、作者の顔が浮かんでしまうとまずいので、忘れたころにまた読みたいと思います。