ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

だれかのいとしいひと

角田光代さんの『だれかのいとしいひと』を読みました。

 

これも、誰か(たぶん小説家さん)がどこかでオススメしていて読んだのですが、まったく思い出せない…。角田光代さんとは初対面です。表紙すてきですね。

 

恋愛を描いた短編集です。短編ごとに味があるので一言では纏められませんが、どちらかというと切ない系でした。この人の長編を読んでみたいな、と思いました。

 

え!この感情って言語化できるんだ!という作品ばかりで、大満足でした。書かれたのはだいぶ昔だと思うのですが、古い雰囲気はまったく感じられないのがすごいです。

 

一番すきなのは『バーベキュー日和』。これ好きな人多いのではないかな。

 

では、以下はネタバレありで短編ごとに書いていきます。

 

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【転校生の会】

転校生の会に参加することで転校生の疑似体験をするような、面白い作品でした。バスのたとえがとても好き。

 

【ジミ、ひまわり、夏のギャング】

雰囲気が完成されすぎている作品。だいぶすき。行動の理由を深く描写してないのが、却って効果的なパターン。たぶん本人にもよくわかっていないはずだから。

 

【バーベキュー日和】

一番すき。町田そのこさんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』の中の短編『溺れるスイミー』と似ている。好きな人たちと自分の価値観が大きくかけ離れてしまっていて、自分の価値観を嘆いてしまう話。みんな幸せになれる方法はないのですか・・・

 

【だれかのいとしいひと】

これもだいぶやばい。この感覚を言語化できる人間がいようとは。

 

【誕生日休暇】

これもすき。持続可能な停滞を選んでしまうのは楽だけれども、それは死を迎えるようなものなんですよね。田辺聖子さんの『ジョゼと虎と魚たち』のラストと似ている。不思議なご縁でカチリとはまる感じもすき。

 

【花畑】

不思議な作品。精神的ハッピーエンド代表作といってもよい。

 

【完璧なキス】

あ!この感覚も言語化できるんだ!という作品。あの、カフェで一人で時間を潰すときの思考。

 

【海と凧】

恋愛関係として、明るい方向に進んでいったの、この短編だけでは…?終盤一気に救い上げられました。

 

【あとがき】

ちいさく、みすぼらしいほどささやかな夢に限って、色とにおいと味と、リアルな肌触りがきちんと存在する感覚、めっちゃわかる。

 

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たぶん2021年最期の読了作品です。よい締め方ではなかったかと思います。