ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

2021年の本棚

2021年も終わりですね。

 

今年は、去年に増して外に出ず、引きこもって読書ばかりしていました。本当に文字通りそうなのです。休みの日にやっていることを他人から聞かれても『本を読んでいます』としか答えられず、適当言って誤魔化そうとしている風に聞こえるのが最近の悩みのタネです。本当に読んでいることが伝わっても、一年を通して変化がないので、いつ聞かれても回答に変化がないのは本当にごめんなさい。

 

さて、今年一年間で読んだ本は、45冊+α。読書メーターに記録したマンガ以外の冊数です。記録していないものも数冊あったと思うので+α。あれ、去年よりは増えているものの、本しか読んでいないと言った割には…。

 

今年の読書を振り返ると、テーマは二つ、『文学賞』と『新しい出会い』でした。

 

まずは『文学賞』から。

今年、はじめて本屋大賞ノミネート10作を、大賞発表前にぜんぶ読むというのをすることができました。無理したわけではないですが、締切を意識して本を読むというのも緊張感があって新鮮でした。本屋大賞は本当にジャンルの幅が広くて、私がこれまで手に取ったことのないようなジャンルの作品とも出会うことができました。

 

それから、『そして、バトンは渡された』(本屋大賞)や『人間に向いてない』(メフィスト賞)、『かか』(三島由紀夫賞)など、文学賞受賞作を意識的に手に取って読んだ一年でもありました。各文学賞の色についても、ほんのりと分かってきたような気がしています。

 

そして、『新しい出会い』です。今年は好きな小説家さんが倍増した年でした。

 

まずは一つ目と被りますが、本屋大賞ノミネート作読破によって、青山美智子さん、伊吹有喜さん、町田そのこさん、等々、新しく触れた方々が多くなりました。

 

それから、私の好きな小説家さんが好きな小説家さんの作品を、意識的に読みました。これが、自分も好きになる可能性が高く、かなりコスパが良くてオススメの拡げ方です。私はこれで、田辺聖子さん、山本文緒さんに出会うことができました。

 

さて、前置きが想像の10倍くらい長くなりましたが、去年の自分に倣って、今年のオススメ作品を紹介したいと思います。

 

去年の自分は偉そうにランキング化していますが、今年はありがたいことに読書体験の方向性が異なる作品が多く、おなじ物差しでは到底計れない状況です。

 

このため、順位はつけずに、オススメ15選!ということにします。…10選のつもりだったのですが、収まらなくなってしまいました。

 

対象は、『私が2021年に読了した小説』です。『2021年に発売された小説』ではございません。この時点でお察しかと思いますが、完全に私の都合と偏見が入りまくったオススメリストですので、ご容赦ください。

 

選出ルールとしては、米澤先生の書評に恐れ多くも倣って、1作者1作品ずつ、という形式を取りたいと思います。作者のあいうえお順で紹介していきます。最期に、個人的ナンバー1だけはピックアップさせて頂きました。

 

あと、一応この記事はオススメということで誰かに読まれてることを想定しているので、これで興味を持った作品について、読んでみてもらえれば、と思っています。なので、本記事では私基準でのネタバレは一切しないようにしています。というか、あらすじもまともに書いていないので、フィーリングで選んでいただく用です。また、検討しやすいかなと思って単行本(値段が高い)か文庫本(お手頃)かを明記しています。

 

それではまいりましょう。

 

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■ 同志少女よ、敵を撃て(逢坂冬馬)

・単行本

【オススメポイント】

稗史としての第二次世界大戦を濃厚体験するのにオススメです。人物の描写が丁寧で、強いメッセージ性もありつつ、エンタメとしても非常に楽しめる一作です。分厚いです。

 

【感想記事】

 

■ invert 城塚翡翠倒叙集(相沢沙呼

・単行本

【オススメポイント】

『medium』の続編なので、『medium』を読んで城塚翡翠の魅力に取りつかれた方にオススメです。倒叙作品(犯人視点で進む推理小説)です。城塚翡翠の人間味を感じることができる大満足の作品です。

 

【感想記事】

 

■ お探し物は図書室まで(青山美智子)

・単行本

【オススメポイント】

本を読むのにパワーが要る人にオススメです。本作を読むのにパワーは必要なく、ただただ回復魔法をかけてもらえます。でもしっかりと心の深い所を刺してきてくれる作品です。若手社会人の方には、特にオススメです。

 

【感想記事】

 

■ 草原のサーカス(彩瀬まる)

・単行本

【オススメポイント】

彩瀬さんが隣で一緒に考えてくれるような作品です。彩瀬さんの長編でないと摂取できない栄養素があると思っています。コロナ禍にも寄り添った作品です。

 

【感想記事】

 

■ 彼方の友へ(伊吹有喜

・文庫本

【オススメポイント】

戦前~戦中~戦後を"想い"で生きる人々のお話です。朝ドラ好きな人は好きになると思いますのでオススメ。

 

【感想記事】

 

■ 推し、燃ゆ(宇佐見りん)

・単行本

【オススメポイント】

"推し"という概念に理解のある方全員に読んでいただきたいと思う一方、非常に"芥川賞"な作品です。純文学にある程度なじみがあった方がよいかも。圧倒的な芸術性の高さとエンタメ性の無さで、終始重い雰囲気が流れています。

 

【感想記事】

 

覆面作家シリーズ(北村薫

・文庫本

【オススメポイント】

すみません、これだけシリーズものでの選出です。『覆面作家は二人いる』から始まり、『覆面作家の愛の歌』へと続き、『覆面作家の夢の家』で締めくくられます。ザ・北村薫なミステリ要素と、シリーズものとして最高のオチが待っています。

 

【感想記事】

 

■ ニルヤの島(柴田勝家

・文庫本

【オススメポイント】

私にとっては新鮮だったSF王道作品です。DNAコンピュータ、ミームコンピュータなど、SFを読まないと出会えない概念に出会えます。決して読み終わるまでは作者の顔を見ない方が良いです。

 

【感想記事】

■ そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ

・文庫本

【オススメポイント】

家族の在り方について、もっといえば、人と人との関係性の在り方についての物語です。主人公には親がいっぱい居ますが、逆境を乗り越える物語では決してありません。

 

【感想記事】

 

■ 応えろ生きてる星(竹宮ゆゆこ

・文庫本

【オススメポイント】

竹宮ゆゆこ入門として強くオススメします。ラノベチックな文体が好きな人だとより楽しめるかも。ハイテンポな恋愛小説です。

 

【感想記事】

ジョゼと虎と魚たち田辺聖子

・文庫本

【オススメポイント】

沁みる短編集です。昭和の頃に書かれた恋愛小説がこんなに今の私に響くなんて…。『うすうす知ってた』は私にとっては化け物級の作品でした。

 

【感想記事】

侍女の物語マーガレット・アトウッド斎藤英治訳)

・文庫本(だけどお高め)

【オススメポイント】

将来現実となるかもしれない、ディストピア世界に没入できる作品です。また、描写力のえげつなさを堪能できます。ヒューマンホラー的な要素もあるので、ホラーや不穏で救いのない雰囲気が好きだとより楽しめるかも。

 

【感想記事】

 

■ 夜空に泳ぐチョコレートグラミー(町田そのこ)

・文庫本

【オススメポイント】

タイトルと書きだしのオシャレ具合が限界突破しています。『カメルーンの青い魚』の完成度の高さがすごいです。切ないけれど、一滴の希望が混じっています。

 

【感想記事】

■ アカペラ(山本文緒

・文庫本

【オススメポイント】

一言では言い表すことができない情愛の関係性がテーマとなった中編集です。この言い表しにくさがいいんです。個人的には表題作が一番すき。この人は天才だと思った作品です。ご冥福をお祈りいたします。

 

【感想記事】

 

■ 黒牢城(米澤穂信

・単行本

【オススメポイント】

戦国×ミステリという異色の組合せの物語です。大河ドラマが好きな人には特にオススメしたい。ミステリのための時代小説ではないし、時代小説のためのミステリというわけでもない。ミステリであり、時代小説であり、この2つの楽しさを1度に味わえる大満足の作品です。

 

【感想記事】

 

■ 個人的ナンバー1

【あらゆる人にオススメしたい度ナンバー1】

今回挙げた15作はどれもオススメですが、とりあえずジャンル指定なしで一つオススメしろ!と言われて差し出すのは、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』でしょうか。

普段小説を読まない方や、重い話や暗い話が苦手な方にもしっかりとオススメできます。本屋大賞も2位ということで、私以外からのお墨付きもありますよ。

 

【個人的に読んでよかったナンバー1】

田辺聖子さんの『ジョゼと虎と魚たち』に収録されている、『うすうす知ってた』です。読んでよかったというか、読んで以降、常に頭の片隅にこの小説が存在していて、時々思考を支配してきます。

このままこの小説を抱えて生きていくのも良いと思う一方、そろそろボトルネックを通り抜けて、次の人生の封を切りたいとも思っています。

 

 

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今年もよい一年でした。