ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

えいえんよりも優しい刹那

桜庭一樹さんの『製鉄天使』を読みました。

 

本作は、『赤朽葉家の伝説』のスピンオフ?作品となります。毛鞠の章でこれくらい濃厚なレディース抗争を描いたらしいのですが、主題から離れすぎて?、泣く泣くカットした部分を再構成した作品のようです。(認識に誤りがあったらごめんなさい)

 

私は『赤朽葉家の伝説』が大好きで、特に毛鞠の章はトチ狂うほど面白かった記憶があります。そんなハードルが上がった状態で読んだのですが、やっぱり面白い。レディースもの(?)って、なんでこんなに面白いんでしょうね。

 

物語としては、結構ファンタジーが入っているというか、現実ではあり得ない描写がコミカルに描かれており、アニメ・ラノベのエッセンスが強いです。異能バトルものかもしれません。

 

でも、基本的には主人公・小豆の内面の成長物語で一貫されていて、他の桜庭作品でもみられる少女性・少女(若者)の刹那性というものが全力で描かれています。ここがたまらなくすきです。

 

以下、ネタバレ含みます。

 

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本文描写を抜粋しながら、ポイントだけ書きます。

 

えいえんよりも優しい刹那だった。

まずはこれ。本作のテーマですよね。若者である、少女であるという刹那性こそが、そこでの経験をえいえんのものにする、という感覚。

 

『ぼくはね、小豆が言うえいえんの国ってのは、ぼくが感じてるそういう気持ちのことかなと思ったんだよ。その伝説の国は、きっと、どこ、じゃなくてさ、いつ、に存在するのさ。時間よ、止まれ、この人たちを愛してる、ってね』

突然現れた兄貴の台詞。"えいえん"は、絶対的・普遍的なものではなく、刹那的・文脈的であることをよく表していると思います。

 

あとはメタ的な観点ですが、桜庭さんノリノリでこれ書いたんだろうなぁ、ってのが伝わってきました。繊細な表現でありつつも、ものすごい勢いを感じましたし、溢れ出てくるものを流れるように書いたような雰囲気も感じました。天才ですね。

 

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赤城山オチは私の理解力では及ばなかったけど、みんな幸せそうなので良し。