三浦しをんさんとは初対面です。去年で、本屋大賞の偉大さに気付いたので、過去の受賞作も隙を見て読んでいこうシリーズになります。
本作はいわゆるお仕事小説です。辞書を作る仕事という、多くの人は触れることがないであろう分野をかなり細かく丁寧に描写しており、それだけでも楽しい小説です。そこに加えて、人間ドラマが展開されていく王道ものです。
本屋大賞として、安心・安定の面白さでした。全く知識のない人でもスルッと入っていける敷居の低さ、それでいてディープな世界観。そこにエッセンスとして付加される人間ドラマ。
では、以下ネタバレありです。
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まずは何よりタイトルがよいですよね。作品の途中で描写がありますが、『舟を編む』とは辞書を作ることの比喩となっています。言葉という大海原を進んでいくための舟…すてきです。
それから、辞書編纂のディープさを堪能することができました。こうやって辞書は生まれるのか…ということや、民間が作る意味など。
なにより、辞書に対するスタンスはなるほど、と思いました。救いを求めて、縋れるものを求めて辞書を引く人を突き離さない配慮。ここまで考えだすと、そら何年もかかるわな…と思いました。
私も一応、人々に言葉で伝えるお仕事をしているので、言葉選びは敏感に常に見直し、常にアップデートしていかないとね、と思いました。
そして人間ドラマですが、個人的には西岡のくだりがすきですね。ラストで、辞書に名前が載っているという回収の仕方もさりげなくてすき。
あとは馬締と香具矢さんの恋愛模様もほんのりしててよかった。裏表紙のあらすじにも書いてありましたが、まさに『ついに出会った運命の女性』ですよね。こういうので拗らせて運命を尊ぶバカ(私)が量産されるのでやめてください。ところで私の香具矢さんはいつになったら現れるのでしょうかね。
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やっぱお仕事ものは面白いですね。想いが周囲に共鳴し、受け継がれていくさまも、伝統厨の私としてはポイント高いです。