坂木司さんの『短劇』を読みました。
坂木司さんは『和菓子のアン』シリーズを読んでいますが、本作はそういったいわゆる日常の謎とは一線を画す作品でした。
非常に短い短編(10ページ前後)がたくさん詰め込まれていて、全体に不思議な世界観で、少し風刺的でもあって、ショートショートと言っていいのではないか、という作品でした。
バラバラなようでいて、アップダウンを繰り返しているようなコミカルさ、順番に読んだ後に残る痼り、あとがきでそれを自覚的にさせられました。
解説にもありましたが、阿刀田高と似た雰囲気を感じます。
以下、ネタバレありで書きます。
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全作品取り上げるわけにもいかないので、特に気に入ったものだけ取り上げます。
■ 雨やどり
これは良い短編。主人公の中で対立する心情を綺麗に切り取って10ページに収まっている。
■ MM
正体は読めたけど、オチの1文が鮮やか。
■ 穴を掘る
めちゃくちゃショートショートっぽい。
■ 最先端
これも風刺が効いてる感じがショートショートな感じ。
■ 物件案内
オチが鮮やかシリーズ。
■ ビル業務
分かっていても、街ゆく人たちにNPC味を感じてしまうことが多いので、この幻想は、あぁそういうこともあるのかもしれない、と思ってしまった。
■ 並列歩行
これ一番すき。ラストにかけての盛り上がり方がよい。
■ 秘祭
これは他人事ではないものの笑ってしまった。
■ いて
意図を完全には理解できず、不穏な雰囲気で締め括られてしまった…。あとがきにある通り、なんとなく周りを見回して、ビクビクする心持ちになる。
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ショートショートは、私の読書の出発点です。ショートショートというより星新一が、かもしれないけど。またこうして巡り会えて楽しかったです。