ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

男たちの朝

西加奈子さんの『夜が明ける』を読みました。

 

本屋大賞ノミネート作の6冊目!無理なく順調に楽しく読めていてハッピーです。とはいえ、今回のノミネート作、内容的にも分量的にもヘビーなものばかりでは…??

 

西加奈子さんは、『きりこについて』や『さくら』を読んでいて、後半の盛り上げ方がすきだと感じている方です。『サラバ!』もいつか読みたい。

 

さて、本作はというと、『星を掬う』に負けるとも劣らず、めちゃくちゃ重い内容でした。いわゆる社会派小説と呼ぶのが正しいのかな?

 

2人の男性が、学生時代から30代になるまでの成長と苦しみをこんこんと描いた小説です。現代の具体的な問題を取り上げていて、そういう意味ではリアリティがあって重々しいです。

 

私個人としては、主人公たちの価値観?とは少し離れた所に居るのであくまで客観的に読んでしまいましたが、それでも、私のお隣さんである、と思いました。つまり、現実の私も陥る危険性のある底なし沼がすぐそこにあって、そこの様子を描いている作品だと思いました。

 

以下、あんまり書けませんがネタバレでの感想です。

 

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2人と、マケライネンの合計3人の人生が重なり合い、共通項が現れながら進んでいく雰囲気は読んでいて面白かったです。一方で、その分、似たような重々しさが続くので、読むのにはパワーが要りました。

 

『星を掬う』のような不幸中毒とはまた違って、明確な問題があって、それに苦しめられていくさまが丁寧に描かれています。かといって、明確な悪役もいないというか。最期に森が言っていたような気がするけれど(言っていなかったらごめん)、人の問題というよりは構造の問題というか。(林とか東国さんは一応代表として立っているけれど)

 

ラストは森がズバッと言ってくれはしたけれど、後味の悪い終わり方で、ここも現実に寄せている雰囲気ですね…。ヒーローが一人いれば解決なんて問題なら、すでに解決しているんですよね。だから、『考えるのを、抗うのをやめるな』というメッセージなのかな、と感じました(私個人は)。

 

私個人の考え方として、ここまで大きな構造の問題に対して抗うのは非常にコスパが悪いと思ってしまうんです。少なくとも現時点において、成果における他人依存性が高すぎるというか。

自分とその周囲の人々、私が幸せにしたいと思う範囲(大きな意味での利己?)に対して、問題があれば抗っていきたい、そう思っている人です。全体バッドエンドは環境条件として、そのうえで個別の小さなハッピーエンドを積み重ねていきたいということです。

 

終盤のタイトル回収はお見事…!序盤から出ていた『男たちの朝』からの反転、すばらしいです。

 

本屋大賞という観点でいくと、『星を掬う』と同様、重すぎる…という点がネックになりそうな印象です。でも今年のノミネート作や近年の受賞作を見ると、どれも重めで、明るい雰囲気の作品なさげなので、あんまり関係ないのかもしれません。