小田雅久仁さんの『残月記』を読みました。
本屋大賞ノミネート作、ラスト!無事に走り切れました。10作の振り返りは、また別で書きたいと思います。
本作は、ノミネート作が発表されたときに未読であった7作の中で、あらすじを読んで一番面白そうだと感じたので、ラストにとっておきました。
今年のファンタジー枠でした。独特な世界観の構築がすさまじく、オビ文にある通り、ダークファンタジーとディストピアが混じりあった混沌とした世界でした。どういう人生を送ってきたらこの世界観を思いつけるのか、知りたすぎる…。
3作のなかだとやっぱり表題作の『残月記』が一番すきかな~。長くて濃厚というのもあるし、淡々とした語り口でありながらも激動の展開であるギャップがいい感じです。
以下、ネタバレありで書きます。
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■ そして月がふりかえる
シンプルホラーファンタジー。月がしばらくトラウマになりかねない…。
最期の最期まで救いのない展開で笑ってしまった。結局、世界構造はいまいちわからなかったな…。わかるように書いていないんだとは思いますが。
■ 月景石
これも結構すき。現実と陸続きの物語から、急に転換が起こって月の世界に飛んで、リンクしながら進んでいき、最終的にドッキングされていく感じ、とても良い。村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の雰囲気。
時間軸は意味わからんけど、大月桂樹のくだりはザ・ファンタジーで雰囲気がとてもよい(語彙力なし)。
■ 残月記
ディストピアとファンタジーが一番複雑に絡み合った世界観でした。なんとなく読んでいたらいつの間にかディストピアの話からファイターの話に変わってました。そして最後はファンタジーに昇華されていく。
これもすべてを読み解くことはできなかったけど、長かった分、一番世界観に浸れました。
■ 月に込められた比喩・ファンタジー
いずれの作品も月が大きな役割を果たしていて、比喩的に使われるとともに、月自体が舞台となってファンタジー世界が構築されています。嫌でも月に対するプラスでない感情が湧いてくるような、影響力の大きい世界観でした。
一方、3作で世界観が共通していたわけではなく、個々で個々の意味を持って登場していました。比喩表現や世界観の読み取りが非常に難解な分、3作共通でジワジワ世界構造が分かってくる展開だと、個人的にはもっと浸れたな~と思います。あからさまに説明を挟む必要はないけれど、3作の展開をつなぎ合わせると見えてくる、みたいな…。
もちろん、実はそういうものがあるけれど、私が読み取れていないという可能性は多いにあるのでそうだったらごめんなさい。
■ 本屋大賞
ゴリゴリのファンタジーなので苦戦を強いられそうです。去年の『この本を盗む者は』も10位だったので…。ゴリゴリのファンタジーって、『途中で断念した』という方が一定層出やすいと思うんですよね。
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世界観の構築はダントツの作品でした。
布団で読んでいて、そのまま寝るかというときに、枕元に本を置いたのですが、風景石が頭をかすめて怖くなり、本棚にわざわざ戻して寝たくらいには、読者の心をむしばんできます。