桜庭一樹さんの『傷痕』を読みました。
桜庭さんはこの前『製鉄天使』を読んだばかりなので、もう少し間を開けたかったのですが、ふと気づいたら積読本の中の桜庭率が異常に高くなっていたので、目についたこいつを読みました。桜庭作品はまだまだ読んでいない作品が多いので、目につくとついつい買ってしまうのですよね…。
本作も、非常に桜庭さん味を感じる作品でした(桜庭さん味が何かということについては、すみませんが言語化できません)。とあるスターの突然の死に対して、様々な主人公が様々な立場から衝撃を受ける作品でした。
ファンタジー要素は基本的に少ないのですが、全体的な雰囲気はファンタジー寄りで、独自の壮大な世界観が組みあがっていました。
以下、ネタバレありで書きます。
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最期まで謎に包まれた部分はありましたが、それが主題というよりも、スターというものの特殊性が描かれていたように感じます。幼少期からマジョリティとはかけ離れた人生を送り、孤独感と独自の論理で闘っていくさま、またメディアからあることないこと書かれ追いかけまわされるさま…。
それと同時に、スターである以前の人間としての彼、というのも印象的でした。最期のイベントで傷痕が放った台詞が印象的です。
『考えうる限りの最上の父親だったということです。
傷痕にとっては、最期まで”スターの死”ではなく”父親の死”なのだなぁと、このブレなさにしみじみしました。
作品全体の雰囲気としては、先程も書いた通り、ファンタジーではないけれどファンタジーな雰囲気で、世界観に置いていかれないように頑張って読んだ感があります。
マイケルがモデルになっているようなので、マイケルに対する知識があれば、もっと楽しめたのかなというのが心残りです(マイケル知識ゼロな人間)。