絲山秋子さんの『御社のチャラ男』を読みました。
絲山さんとはこれまた私としてはお初です。最近は開拓シーズンに入っています。
会社に居るチャラ男の周りの人々の物語がバトンリレー的に展開されていく多人数視点の小説です。この多人数視点のお話として非常に完成度が高く、大満足の社会人小説でした。
どの登場人物も、『あぁ~こういう人私の近くにもいる~~』という人たちばかりで、絲山さんは現実を抉り取る力が非常に高いな…と感じました。各々の持つ"正しさ"がしっかりと描かれることで、自分とは全く違う人物にも寄り添うことができたし、こういう"正しさ"の違いが、表面上でこういう対立に繋がっていくのだな…というのを少し理解できた気がします(あくまで小説なのだからこれで現実を理解した気になってはいけないよ私…)。
それでは以下はネタバレありで書いていきます。
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本作は、気に入った表現を引用していく感じにします。
『そういう言葉が好きなひとのことを、これ、私だけかもしれないけど、石北会計事務所って呼びます。』
p36。石北会計事務所の響きがすき。
突然の変更が苦手なひとというのは、世の中にはけっこういる。
p103。これなのよ~~。いい悪いという話ではないけど、この感性の違いだけで意見がすれ違うことがままあると感じる。
『休みをください』とかれらは言う。けれども激務は続けていきたいと思っている。もっと痛い目に遭いたいとすら望んでいる。
p127。これね~~~。
人間は喜ぶために生まれてきたんだよ。
p133。これまでチャラ男さんの良くない所ばかり描かれてきて、理解不能の存在と思っていたのに、ここで急に『あ、この人私に似てるかも…』と思ってしまった。つまり…??
最初の一歩を踏み出す前に完成予想図の上空をぐるぐる偵察飛行するのはやめようと思った。
p206。あ~~今の私に刺さります。
ほんの少し構図が変わるだけでいつまでも見飽きない地獄の万華鏡。
p272。これね~~~(2回目)。
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絲山さんも表現力の化け物ですね…!また別の作品読みたいです。