相沢沙呼さんの『invert Ⅱ 覗き窓の死角』を読みました。
城塚翡翠シリーズ(?)、待望の第三作目です!二作目に続いて倒叙ものの中編2つという構成ですので、二作目『invert』を楽しめた方には是非オススメしたいです。
話の展開としても、まだまだ続いていきそうなシリーズですし、非常に私好みの展開になりそうな予感がするので、今後も気長に楽しみに続編を待ちたいと思います!
本作は何を書いてもネタバレになるので、以下ネタバレ要注意です。
本作単体でということではなく、シリーズ一作目二作目の核心に触れざるを得ない部分もありますので、重々ご注意ください。
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■ 魅力概略
私が二作目で感じていた魅力は、三作目にもしっかりと引き継がれておりました。二作目感想と全く同じことを言いますが、魅力は大きく分けて2つ、『探偵の推理を推理すること』と『城塚翡翠の人間味』です。
■ 魅力①『探偵の推理を推理すること』
翡翠がどういった論理で犯人を特定し、追い詰めるのか、を我々読者が推理するという構図は変わらず、新しいトリックで以て楽しませてくれました。
この魅力は『生者の言伝』の方で顕著だったと思います。ほぼほぼ蒼汰くん目線で話が進んでいくので、翡翠のあざとすぎる行動の意味を推測しながら読み進めるのが楽しかったです(笑)。さすがに蒼汰くん相手ではオーバーキル感があったなぁと思っていて、蒼汰くん廻りの伏線は(翡翠の示唆ありで)気づけましたが、核心となる別犯人は全く予想できていませんでした…。
『覗き窓の死角』については、割と翡翠側パートも多く、彼女も行き詰っていたので、一緒に考えていくような構図だったと思います。というか、純粋にトリックレベルが高かったな…。朝じゃなくて昼に殺した可能性は微塵も予想できていなかった…。財布にしまったはずの半券チケットがポケットから出てきたのは気づけましたが、それが示すトリックには微塵も思いつかなかったよトホホ…。
そして、トリック自体はガチガチのやつなんですが、会話劇や差し込まれる描写はとてもエンタメ的で、全体としては固くなりすぎず、このバランスが絶妙ですきでした。
■ 魅力②『城塚翡翠の人間味』
これも二作目感想と全く同じことを書きますが、これこそが私が思う本シリーズ一番の魅力であり、『城塚翡翠は何者か?』が柱となる謎だと思っています。
本作では、二作目よりももう一歩踏み込んだ印象で、割と素直な翡翠の感情が見えていたような気がします。
特に『覗き窓の死角』では、冒頭の詢子との素に近いやり取りだったり、真との距離感に悩む様子など、対外的な城塚翡翠像とは異なった面を多く見ることができました。
また、城塚翡翠の生き様というか信念についても割とまっすぐにみることができたのかなと思います。
謎そのものについては、翡翠の過去や真との経緯など、メインとなる部分からはまだまだ遠いですが、弟の存在、大切な人を失くしたと思われるような描写、奇術の師と思われる人の存在、警察との関係性など、伏線がゆっくりと増えてきました。
詢子とのやり取りで、過去に写真を撮りたいと言ってくれた人がいると話すくだり、個人的には詢子の犯罪にもう気づいていて詢子のことを言っているのでは!?!?!?と思ってしまいましたが、そうではなかったようです(笑)。つまり、本当に過去にそういう方とのかかわりがあったとみるべきでしょうか。
■ 個人的にすきなシーン
個人的にすきなシーンを2つほど引用したいと思います。
そんなときこそ、この奇妙な友人を支えてやるのも、自分の役目なのだろうと思う。
p257の真の描写です。翡翠からは真を友人と言ってよいものか悩んでいる描写が多くありましたが、真からは迷いなく"友人"と呼んでいることにエモさを感じました。私が気づいたのがここというだけで他にもあったかもしれないのですが。
真の活躍や解像度も上がってきており、よりホームズとワトソンとして関係性が強固になってきているように感じます。
『でも……、その好奇心と正義心を抱くことができれば、助けを求める誰かを救うことができるかもしれないのです。~(中略)~』
p350の翡翠の台詞です。翡翠の中での"正しさ"がまっすぐに表れていると思います。翡翠さん、あんたは強いなぁ…。純粋に尊敬です。
■ まとめ
今まで以上にかなりライトな描写(適切な表現が分からない)も多かったですが、これこそが翡翠の戦略でもあり、また王道・本格の叙述ミステリでありながらもエンタメ性が高く敷居が低いのは、こういったキャラクター性のおかげなのだろう、と思います。
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これからも、城塚翡翠の生き様を見届けたいです。いつでもいいので、待ってます!!!!!