ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

君の地球が平らになりますように

斜線堂有紀さんの『君の地球が平らになりますように』を読みました。

 

本作は、私が今年読んだ中で圧倒的トップに君臨し続けている『愛じゃないならこれは何』の系譜となる、斜線堂先生の恋愛地獄小説第二弾です。

 

『愛じゃないなら~』がぶっ刺さった私だったので、私の中では読む前から否が応でもハードルが上がりまくっていたのですが、心配ご無用でした。本作もそのハードルを軽々と飛び越えるぶっ刺さり作品集でございました。私の好みドストレートを往くやつでした。

 

ベースの感想は『愛じゃないなら~』の方に書いているので割愛しましょう。

sugatter315.hatenablog.jp

 

どの短編も最高なのですが、あえて個人的一番を選ぶなら『「彼女と握手する」なら無料』です。"推し"に対するスタンスの掘り下げがすごかったです。

 

先日参加させて頂いた、柴田勝家殿との合同トークショー『池袋の乱』にて、第三弾へと続くことが明言されたので、私は非常にハッピーです。斜線堂先生にはもっともっと地獄小説を量産していただきたい……!!

 

では、以下では短編ごとにネタバレありで書いていきます。

 

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■ 君の地球が平らになりますように

本作についてはweb公開のタイミングで読んでしまっていたのですが、こちらも再読しました。

小町の東に対する感情がどんなものなのか見えてこない状態で淡々と進むちょっとした恐怖展開ののち、ラストに明かされる経緯と爆発する小町の感情、石が小町の手の中にもあったのだという展開が切ない。

そしてラストの一文の情緒がすごすぎる。バッドエンド感がたまりません。

 

■ 『彼女と握手する』なら無料

まさかの東グレ繋がりが嬉しすぎました!前作は『ミニカーだって一生推してろ』が一番刺さったので…。本作もアイドル活動というものを通じて、"推されること"がテーマになっていて非常に興味深かったです。

『数秒間だけ恋に落ちている。』なるほどね……。そういう解釈もアリなのか(アリなのかは知らん)。でもそのスタンスによって、推す側との意識のギャップに押しつぶされていくのが本作ですね。

辛さを補うために孝徳という存在に縋ったものの、自分は『めるすけ』と恋がしたかったのだと気づく…。『ミニカーだって~』との対比が綺麗だわ…。

それを自覚したうえで、自分が求めているものは孝徳はくれないと分かったうえで、それでも好きになりたいと思い、信じ願うのが結婚、と…。う~~んうまく言葉にできませんがこの落としどころのセンスがヤバすぎます。ここも『ミニカーだって~』との対比が綺麗!!!

今後も東グレシリーズ続いてくれると私が嬉しいです。

 

■ 転ばぬ先の獣道

本作も、先行してweb公開されていたものを読んでしまっていましたが再読し、もう一回刺されました。

前回の感想でも書きましたが、この先がめちゃくちゃみたい作品だし、トラという地獄を選ぶ月子をみてみたい気もする。自分をトラにチューニングできれば解決なんだろうけど、なかなかそうはいきませんね。このあたり表題作と似てるかも。

 

■ 大団円の前に死ぬ

これもめっっちゃ良かった~~。ホストにまつわるこういう世界があるのは何となく知っていたけど、その真髄を見た気がします(本作はあくまでフィクションなのでこれを現実ととらえるでないぞ私)。

本作はとにかくタイトルセンスが光りますね。序盤は、大団円の前に(主に金銭的に仁愛が)死ぬって意味で捉えている所で、大団円の前にお姉さんが死んでしまうんだもんなぁ…。

これも締めの一文の情緒がすごすぎます。

 

■ 平らな地球でキスはできない

これ難しいな~~。たとえ今がどうであれ、過去のステキな出来事はステキな出来事のまま取っておけると思っていたけれど、こんな風に苦しみに変わってしまうこともあるのだな…。仮に桃華が地獄を選んだ場合に、どういうアプローチをとるのかは非常に気になりました。

それにしてもラザニアのくだりが切ねぇです…。

 

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『愛じゃないならこれは何』に負けるとも劣らず、私の心をぶっ刺してくる作品でした。今年は斜線堂先生に出会えたのが読書における一番の収穫だと思います。

 

第三弾も気長にお待ちしております!!!!!!!!!!!