安壇美緒さんの『ラブカは静かに弓を持つ』を読みました。
安壇さんとは初対面で、本作も恥ずかしながら本屋大賞ノミネートまで知りませんでした。
このため、ほとんど前情報のない状態で本作を読んだのですが、圧倒的に私好みの作品でした。扱っているものは少し特殊なものの、ストーリーとしては王道どまんなかの音楽小説で、めっちゃ本屋大賞っぽい…と思ってしまいました(笑)。
では、以下はネタバレありで書いていきます。
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■ ストーリー全体
スパイとして音楽教室に潜入した橘はチェロに対するわだかまりを抱えていて、スパイのはずなのに音楽教室の面々との関わりを通じて心が融けていき…めちゃくちゃ王道ストーリ―で非常に読んでいてドキドキハラハラもしましたし、その一方で安心して読めるエンタメ性もありました。起承転結も非常にキレイな構造でした。
橘は、スパイをするには人間の心を持ちすぎていましたね…後半吹っ切れていくのも痛快でよかったです。
■ 浅葉を囲む会
個々人の深堀はあまりなかったものの、こいつらいいやつすぎるよ…。そもそも、社会人になってから新規に、しかも年代もバラバラの集まりがここまで強い関係性で居られるって、そんなのフィクションだよ…(めちゃくちゃ褒めてます)。それを可能にしているのが浅葉の人間性だと思うし、こういう人の所には自然と人が集まるんだなぁと思いました。花岡さんとかすみちゃんのコンビ好きすぎる。
■ 著作権の話
私は全然認識していなかったですが、現実世界でも現在進行形に近いテーマなんですね。最新のニュースをみると、どうやら生徒が練習で弾く限りにおいてはカラオケ法理は適用されない、という見解が出た模様です(ほんとに詳しくないので間違ってたらすみません)。
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テーマも雰囲気もまるで違うけれど、エンタメ性がものすごく高いという点が去年の本屋大賞とよく似ています。万人受け間違いなしのストーリーでもあるので、大賞を獲る可能性がかなりあるのではなかろうか、と思っています。
どちらにせよ、めちゃくちゃ映画化しそう。してほしい。みたい。