ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

方舟

夕木春央さんの『方舟』を読みました。

 

本屋大賞2023候補作、これにて全て読了です!無事に余裕を持って読み切ることができました。ランキング予想はまた別で書きたいと思います。

 

本作は、本格ミステリです。非常に特殊な舞台設定であるにも関わらず、非常にフェアに話が進んでいくのはとても本格ミステリみが強かったです。

 

特に真相の衝撃は絶大でした。

これ以上書くとネタバレになりかねないので、以下はネタバレありで書いていきます。

 

 

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■ ストーリー展開

柊一が語り手となって話が進んでいくのが徹底されており、そのほかの登場人物が等しく容疑者であることが、非常に本格ミステリ好きが好きそう、と思いました。これは本家ネタバレ解説にも書いてありました。確かにこの手のフーダニットにおいて、動機からメタ的に推理できてしまうと面白くないですもんね。

 

■ トリック

翔太郎の推理は基本的に素晴らしかったと思います。犯人も全てを知っているわけではないということを踏まえて、あえてそうしたという選択肢を排除し、そうせざるを得なかったことを論理で証明するのは非常に筋が通っているなぁと思いました。

まぁ、それが犯人である麻衣のサポートになっているのが非常に虚しいわけですが…。動機を可能な限り排除して推理したのが敗因だったのかもしれませんね。非常に悲しい探偵役です。

 

■ 動機

ホワイダニットがここまで綺麗にどんでん返しされるのは今まで経験がなく、新鮮でした。鮮やかすぎるし残酷すぎる。ほんのりバッドエンドの匂わせから、ここまで圧倒的かつ正反対方向のバッドエンドに持っていくとは…。

でも麻衣には人間味を感じられなかった。ネタバレ解説で、殺人に至る倫理的側面以外での理屈が示されてはいたけれど、状況的にたとえそうだったとしても、地震後のあの短時間でその事実を受け入れてあの思考回路になるのヤバすぎる。無論こんな状況下に陥ったことはない人間なので何とでも言えるでしょう、という側面はありますが…それにしても諦めが早すぎやしませんか…。

 

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本格ミステリは、本屋大賞とことごとく相性が悪いので、大賞は厳しいかなと思います。何より残虐な殺人事件かつ超絶バッドエンド作品ですので…。