ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

本屋大賞2024、ごちそうさまでした!!

最近は感想をブログに書き起こすモチベが中々湧かずにいますが、読書は相変わらず続けています。そしてここ数年恒例にしている、本屋大賞ノミネート10作読みを、今年も達成することができました。

 

今年は例年以上にバラエティ豊かで、全然知らなかった作品たちに多く出会うことのできた幸せな時間でした。

 

さて、今年も甚だ僭越ながら本屋大賞順位を考えていきたいなと思います。悲しいことにこれまで全然当たっていないので、もう当てようと思うのを諦めました。勝手に予想しているのが楽しいのでそこに価値を見出していきます。

 

本屋大賞の選考方法(去年のコピペ)

本屋大賞の二次選考については、各書店員の方々が、10作を全て読んだうえで、トップ3を選ぶという形式になっています。点数は1位>2位>3位となりますが、4位以下は全て0点というのが注目点だと思います。

そうなると、1位を取りやすい作品というよりも、どんな方でもトップ3に入ってくるような作品が強いのであろう、と思っています。つまり、好き嫌いがハッキリわかれるような作品は選ばれにくい、ということです。

また、短編は長編に比べてやや不利のようです。特に、完全独立した短編集だと、本単位で推すのにためらいが生じる側面があるのではないかなぁと思います。その点、連作短編であればそこまで不利ということはないかもしれません。

 

本屋大賞の目的

本屋大賞は、『全国書店員が選んだ一番売りたい本』です。『一番売りたい』本です。『この小説をもっと世に広めたい!』と思える必要があるので、やはり万人受けというのは一つのキーワードだと思います。

 

■ 順位予想

1.スピノザの診察室(夏川草介

2.星を編む(凪良ゆう)

3.水車小屋のネネ(津村記久子

4.リカバリー・カバヒコ(青山美智子)

5.成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈

6.エーレンデ国物語(田崎礼)

7.存在のすべてを(塩田武士)

8.黄色い家(川上未映子

9.放課後ミステリクラブ1(知念実希人

10.君が手にするはずだった黄金について(小川哲)

 

■ 各作品へのコメント・感想(極力ネタバレなし)

1.スピノザの診察室(夏川草介

 個人的には2位と併せて飛びぬけてトップクラスでした。医療と哲学についてのお話です。患者も医者も人間ということ、芯の通った人って本当にかっこいいなぁということを思いながら読みました。単純な悪役を役割として与えられているような登場人物も居ないのも高評価ポイントです。出てくる人みんなに血が通っています。

 

2.星を編む(凪良ゆう)

 北原先生のことが大好きすぎる。人間の一生をこの解像度で描き切れるの、本当に天才だと思います。『汝、星の如く』のスピンオフの位置づけだが正統続編と言ってもいいくらいで、落ち着いて考えてみても北原先生のことが好きすぎる。ありがとう。

 一方で、良くも悪くも汝が土台にある必要があるということと、去年受賞をされていることを加味し、迷いましたが2位に。でも昨年も投票された書店員さんは必然的に汝は読了しているんだよなぁ~~。

 

3.水車小屋のネネ(津村記久子

 この作品をベースに朝ドラやってください。こちらも人間の半生を描き切っていてネネがとてもいい味を出している。迂遠な感じや恩送り的精神もとてもいい。特別な描写だったり登場人物の内面を深く描くような表現はないんだけれども、丁寧な描写によって、自然と登場人物たちの感情が滲み出てきているのが、描きたいことを描かないことでより際立たせているのが、本当すごいなぁと思いました。

 

4.リカバリー・カバヒコ(青山美智子)

 安定感抜群の青山作品。今回も青山作品としては王道の進化版のような形で、心にすっと沁みてきて、しかもオチが見事かつ爽やかなの、これこれ!って感じで大満足でした。カバヒコの扱いも重すぎないのがステキ。青山作品は短編だけれども例年高順位なのですが、今年はちょっと半生描く系の長編が多いのでどうだろう~~。青山先生にそろそろ獲ってほしい気持ちはすごくあります。

 

5.成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈

 エンタメ小説、キャラクター小説として圧倒的1位感ある作品だった。物語としてとても面白く、そのうえで成瀬や島崎にちゃんと人間味が感じられるのがポイントとても高い。行動が記号化せず、圧倒的な青春小説として仕上がっている。行動の中に自分自身を見出すことができるので想像よりも共感しやすい。

 

6.エーレンデ国物語(田崎礼)

 王道で濃厚なファンタジーでしたが序盤さえ突破すれば非常に読みやすく、入り込んで楽しむことができました。ファンタジー読んでみたいけど普段ファンタジー読みません、という人間にオススメの一冊かもしれません。

 描写がとても丁寧だし世界観の作りこみもすごいけど、会話が軽やかで現代的なのがプラスでもありマイナスでもありといった所です。個人的にはのめり込めたのでもう少し各登場人物たちの掘り下げが見たかったなぁと思っちゃうけど、それやってたら何冊あっても終わらないだろうし、おそらくコンセプトとして国物語というのがあるだろうから、そこはそうなんだろうなぁと思います。

 

7.存在のすべてを(塩田武士)

 非常に濃厚な社会派ミステリ。ちゃんとした(?)社会派ミステリは宮部みゆきしか読んでこなかったので、必然的に宮部作品を想起せずにはいられないけれど、ディティールが凝られていてとても新鮮な印象もある不思議な作品でした。同時に、『火車』という作品の完成度の高さについて改めて唸らされる機会にもなりました。

 

8.黄色い家(川上未映子

 途中までエンタメとして読んでしまっていましたが、これは純文学ジャンルですね。純文学としての混沌さが最高峰でとても良かったです。混沌と狂気の生々しさ、煩雑さに重点が置かれている気がして、情報量!って感じでもありました。ノワール小説としては読む前に私が想像してたものとはちょっとちがって、黒というより狂気、罪のうしろめたさというよりは罪を犯す動機と犯罪と日常の共存性みたいなものがメインだったかなぁと思います。

 

9.放課後ミステリクラブ1(知念実希人

 児童書として初のノミネートということで、とてもめでたい!こういう異色選出がもっと出てきて異色じゃ無くなればいいなと思います。非常に丁寧なミステリの入り口作品で好きです。内容も全然違うけど、かつて狂ったように読んでいたマジックツリーハウスを思い出しました。

 

10.君が手にするはずだった黄金について(小川哲)

 嘘に本当がワンエッセンス混じっていることで実在性が高まったように感じられる、メタ的要素のある作品でした。構造はすごく好きです。哲学的な話も多くて、こいつめんどくさっ!!って思うけど私もたまにこういうこと考えるから人のこと言えないなと思いました。これはどうしても評価が分かれる作品になると思いました。

 

■ まとめ

5位までは、本屋大賞獲りました!っていわれても『そうだよねー』って思えるくらい納得感があるのでその中から選ばれるといいなと思いつつ、6~10位もすごく新鮮な出会いが多かったのでここから選ばれるのも嬉しいなと思う、予防線張りまくりの今日この頃です。

本屋大賞、今年も沢山の出会いをありがとうございます!発表楽しみにしています。