ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

月の立つ林で

青山美智子さんの『月の立つ林で』を読みました。

 

私の中でのホッコリ枠大筆頭、青山さんの最新作です。本屋大賞にて連続で2位を取られていて、そういった意味でも今作を楽しみにしていました。

 

本作も、青山さんお得意の連作短編集ですが、これまで以上にオシャレさと神秘さが磨かれていて、帯に書かれている"青山美智子最高傑作"に偽りなし!と思いました(まだ青山作品網羅できてないけど)。

 

青山さん作品は、絶妙な繋がりがいいのですよ~~。直接的ではないけれど、前半の登場人物たちのその後が意外な所で見え隠れしたり…。

 

特に本作は、月が一つの大きなテーマになっています。前作『お探し物は図書室まで』でも月がテーマの短編が一つあり、それをキッカケに少し月に関して知識を蓄えた状態だったので、本作がより沁みた気がします。

 

では、以下は短編ごとにネタバレありで書いていきます。

 

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■ 誰かの朝

職業に基づく偏見はほんとやめてほしいよね…でも私もついやっちゃうし、ある意味ではコミュニケーションの円滑化には貢献するので、こういうのは防御もだいじ…。

「朔」という言葉には個人的に思い入れがあるのですが、勝手に字面で思っていただけなので、"新月"という意味があるのには非常にびっくりでした。本作では"新月"が大事な意味を持っているだけに、なんだか嬉しい気持ちになりました。

ラストにかけての心情変化描写が丁寧ですきです。立ち止まってしまった人が再び一歩を踏み出すお話が大好きな私にはドンピシャでした。

 

■ レゴリス

本作に限らないけれど、SNSを代表とするインターネット上の緩い関係性というのが、現実の人間関係では踏み込めないところを優しく支え合ってくれているのが、現代を非常に的確に捉えているなぁと感じました。ポッドキャストもそうだし、後半でも効いてくるけど「夜風」との関係性など。

 

■ お天道様

これ一番すきかも。

『お探し物は図書室まで』でもあったと思うけど、おじ様主人公を描くのも非常に上手いなぁ…。ちょっと頑固めなんだけど、新しい知識や価値観をまっすぐに受け止めることができるよいおじ様だよ…。

亜弥からの電話でオロオロ泣いた。最近の涙腺は全く耐えてくれませぬ。

『大丈夫だよ。おまえ、もうじゅうぶん、いいお母さんだ』

この返しができる考えの持ち主になりたい。

千代子を月の女神様に例えるラストもすてき~~。

 

■ ウミガメ

これも青春要素強めですき。

『ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う。』

これは私の好きな恩送りに近い考え方だと思います。もっと恩を送っていこうぜ~~。

 

■ 針金の光

ここでminaが主人公になるのはまさしく連作短編集の妙技ですね。

我々は本当の意味で分かりあうことなどできないのだけれども、それでも分かり合おうと言葉で伝えようとすることをやめてはいけないんですよね。今の私にとても刺さります……。

そして裏で本作を支えていた『ツキない話』の伏線回収…!めちゃくちゃ綺麗です。連作短編としての完成度も高いですし、短編なのにしっかりカタルシスを感じられる。

 

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全体を通して、月の満ち欠け、特に新月に対して自身の立場をシンクロさせながら前に進む、月に力を貰っていくお話で、読んでいてとてもパワーを貰えるお話でした。

ぜひ、ぜひとも、本作で本屋大賞を獲っていただきたいです…!!!!!!!!!