ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

『いまからあなたはタオルじゃなくて、ぞうきんよ』

桜庭一樹さんの「赤×ピンク」を読みました。年末年始は働いてるので、謎の読書欲が爆発しなければ、多分今年最後の本です。

 

やっぱ桜庭さんって天才だなと思いました。桜庭さんの人間性?について、私はよく知らないので完全なイメージですけど、桜庭さんの作品を読むと毎回そう思うんですよね。

 

今回の作品は、「ガールズブラッド」と呼ばれる非合法ガールファイトが舞台です。…意味わからんですよね、読んだ私もまだ正確には頭の中で具現化できていない状態です。プロレスみたいな感じです(プロレスのことも私よく知らないので偏見に偏見が重なってたらすみません)。

 

そんなぶっ飛んだ設定の中で語られるのは女性3名の人間ドラマです。少女と呼ぶには大人で、かと言って大人の女性かというと微妙な頃合いです。この少女と大人の狭間で揺れ動く感じを、タイトルで示唆しているのかなと思いました。そして、これを語るためにこの設定を思いつくというのが天才的すぎました。

 

少女には向かない職業」でもありましたけど、人間の不安定性を描くのが本当に上手いなぁと思います。

 

以下、ネタバレ有りで感想を。

 

 

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①まゆ

3名の中でたぶん一番年上なのに、一番幼く感じます。

幼い頃の虐待のトラウマから、愛への価値観が歪んでしまってるというか、自分ではもう檻から抜け出せない。

 

わたしを檻から出して、黙って頭を撫でてほしかった。

誰かがわたしを愛してるってことを、そうされることで知りたかった。

 

この部分がまゆの全てだと思います。だから、ケッコンマニアの彼が、檻から出してくれたというその一点のみで、まゆのすべての愛の対象になってしまったという解釈です。

 

ケッコンマニアの彼は受け止めきれなそうな印象を受けたので、二人はうまく行かなそうな気がしました。でも、まゆにとっては彼が全てで、代替不可能になってしまってるから、檻から彼に変わっただけでは…という感があり、3名の中で一番今後が心配です。

 

 

②ミーコ

ミーコの話、けっこう刺さりました。比べるのもおこがましいですけど、私と共通する部分というか、共感箇所が多かったです。

 

『わっかんないはずないだろ。みんなわかってるよ、そこは。悩みってのはその先にあるもんだよ』

皐月から性愛対象について問われるシーン。自己を確立した上で悩んでる皐月と、自己を確立していない、確立していないことに気づいていないミーコの、決定的に分かり合えない部分ですよね。私はミーコ側。何に悩んでるか分からず悩んでる側。

 

皐月のアドバイスのおかげで、自分の好きなもの、やりたいもののために闘うことができて、たぶんいい方向に吹っ切れたラスト。

 

自分の気持ちがわからなくなった時は、グダグダ考えるよりも、自分のこれまでの行動を振り返った方が、たぶん早い。やがて君になるでも似た描写がありましたね。

 

 

③皐月

前2名の話の頃から、何か隠してる感じをずっと匂わせてたけど、少し複雑な葛藤でした。ただ、やっぱりミーコの悩みとは対極にある悩みですね。

 

ミーコと皐月のハッピーエンドがワンチャンあるのかなってミーコの話でも思ったけど、ちょっと違いましたね。でも多分そういう世界線もあると思うというか、ミーコ途中で嫉妬まがいのことしてましたよね?穿ち過ぎ??

 

裸を見たくない、見られたくないってのは深いなぁと思いました。性愛対象として見てしまうから見たくない、自分が女であるという事実を確定的にしたくないから見られたくない、と。

 

千夏との出会いで皐月の中の何かが変わっていく。千夏と皐月はなんで互いに感じるところがあったのかな、そこはたぶん十分には読み取れなかったポイントです。

 

ラスト、皐月は明確に一歩を踏み出せたけど、千夏はどうだろうな。皐月と千夏との関係性が続くかどうかは、また別の話って感じがしました。

 

「ゴーホーム……』