宮下奈都さんの『羊と鋼の森』を読みました。
2016年の本屋大賞受賞作です。以前からずっと気になっていて、なんだか勿体なくて読めていなかったのですが、ついに読みました。
ピアノ調律師のお話で、特にファンタジー要素はないのですが、なぜかとても幻想的で独特の世界観を感じる作品でした。文体がそうさせるのか、ピアノ調律師という普段かかわりのない職業がそうさせるのか、話の展開がそうさせるのか…。
そんな雰囲気の中で、それに120%マッチしたストーリー展開で、非常に完成度の高い作品でした。お仕事小説であり、外村青年の成長物語であり、幻想的な雰囲気がある一方でとことんリアルが追求されています。
それでは、以下はネタバレありで書いていきます。
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■ 主軸
彼と、各登場人物との関わり合いが主軸に物語が進んでいきます。ピアノ調律師に突然魅せられてから、調律師を目指し、四苦八苦して、自分の夢の解像度を上げていく成長物語。落ち着いた雰囲気で物語が進んでいくのに、なぜか非常に読ませる展開でした。
こういうほんのり暖かい物語、久しぶりに読んだかも…(笑)。今年の本屋大賞候補は重めだったもので…。
■ 双子の姉妹
登場人物の中では結構浮いた存在ですが、幻想的な雰囲気に非常にマッチしていると思いました。描写は決して多くないのに、復活劇にすごく心を動かされました。
『ピアノで食べていこうなんて思ってない』
和音は言った。
『ピアノを食べて生きていくんだよ』
和音の言う『ピアニストになりたい』というのは、仕事としてピアノを弾くことを選びたいというのではなく、ピアノを弾くことやそれに準ずることをもっともっと摂取していきたい、という意図なのですよね。和音にとってピアノは空気と同じで、摂取しなくては生きてはいけないものになった、ということですね。
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宮下奈都さんはお初でしたが、非常に暖かな気持ちにさせてくれました。また読ませてください…