森見ワールドに浸りたくなった時用に買っておいて、長らく積んでいたのですが、ようやくその時がきて読むことができました。
本作はその期待に150%で返してくれました。他にはない独特の世界観が構築されているのにも関わらず、ふと彼らの中に自分を見てしまうような人情ドラマが描かれております。
設定も盛り盛りだしまとまりがあるわけじゃないのに、全てが面白さの核であるこの感じ、天才でしかありません。
みんな好きだけど、特に矢二郎がすきです。
では、以下はネタバレありで書いていきます。
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■ 納涼床の女神
独特の世界観への入り口です。言い回しがいちいち森見節が効いていてよろしい。
矢文のくだりは四畳半神話体系のオマージュを感じた。どっちが先かは知らないけど。
■ 母と雷神様
雷が鳴ると家族全員で母のもとに集まってあげるたぁ、なんてあったかい家族なんだ…。
金閣銀閣が悪役的立ち回りなのにいかんせんポンコツなので憎めないのがいい。
■ 大文字納涼船合戦
なんにもうまくいってない不毛な戦いなんだけど、どんちゃん入り乱れ具合が絶妙でめちゃ面白シーンだった。
■ 金曜倶楽部
父親を食べた団体と仲良くやれてしまう矢三郎はやはりタヌキ…。阿呆の血のしからむるところ。でも争いを生まないその精神も見習いたい。
■ 父の発つ日
総一郎と赤玉先生が朱硝子で一緒に飲む不思議なシーン、すごく好き。
ラストの母と矢一郎のやり取りのシーンがとてもぐっときます。
■ 夷川早雲の暗躍
夷川早雲…。こいつだけは最後まで得体のしれない人だったなぁ。
■ 有頂天家族
矢四郎がビビッときて矢二郎に助けを求め、その矢二郎による偽叡電展開、めっちゃすきです!!!
ハチャメチャ展開でありつつも、ラストにかけて綺麗に仕上がっていくの、最高に森見作品です。
「兄弟仲良く!忘れてはいけないよ。兄弟仲良く!なにしろ、おまえたちには、みんな同じ『阿呆の血』が流れている」
狸は如何に生くべきか、と問われれば、つねに私は答える―――面白く生きるほかに、何もすべきことはない。
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新年一発目として非常にベストな選択ができました。
第二作ももう買ったので追い追い読みたいと思います。