ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

朝からかつ丼はきつい

瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』を読みました。

 

瀬尾さんとは今回が初対面です。本作は本屋大賞受賞作なので知っていて、かなり前から読みたいと思っていた作品でした。

 

いざ読み始めてみると、手が止まらない止まらない。それなりに厚めの本でしたが、一日で駆け抜けてしまいました。

 

さすが本屋大賞です。やっぱり本屋大賞は偉大なので、過去受賞作も今後コンプしていきたいなぁ。

 

本作は、名字が3回、家族形態が7回も変わった優子という女の子のお話なのですが、書き出しが特徴的です。

 

困った。全然不幸ではないのだ。

状況のあらすじだけみると重いテーマの作品のように構えがちですが、本題は家族形態が変わったことそのものではなく、優子と周囲との心の通わせ合いに主眼が置かれています。思ったよりは重くなく、文体も軽快で、非常に読みやすかったです。

 

テーマは、家族のありかたについて。正確にいえば、人と人との関係性のありかたについて。こないだ感想を書いた『あことバンビ』や、『違国日記』と通ずるところがあると勝手に感じました。

 

では、以下に感想をつらつらと。

 

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登場人物(主に優子の親)が多いので、登場人物ごとに見ていこうかな。

 

【水戸さん(お父さん)】

何も間違ったことはしてないと思うけど、優子に選ばせるのかどうかは悩みどころよね〜〜。梨花の主張も最大限尊重したってことなんだろうけども。作中でも言及されていたけれど、選択の自由を与えられるということって、責任を負わされることでもあるのよね。子どものやりたいようにやらせる、というのも考えものなのか…と思いました。

でも、最期まで変わらない優子への愛情は、すごいなと思いました。

 

そして何より、海外出張は絶対したくないな、と思いました(取らぬ狸の…)。

 

梨花さん】

この人の愛も深いなぁ。一所に留まれない性格でありながら、優子を引き取るという覚悟。ピアノの夢を実現させ、自分の病気が発覚してから他の人へ優子を託すこの行動力。感情論理は共感しにくい部分はあるけれど、梨花さんのなかで、優子の存在がどれほど大きいものだったのかは、ひしひしと伝わってきました。

森宮さんの所から姿を消したくだりでは流石に不穏展開かと思ったけれど、ここにも梨花さんなりの愛が変わらず根底にあったのですよね…。

 

【泉ヶ岳さん】

この人の愛も深いのだけれど、どっちかというと梨花への愛が深いですよねぇ…。

梨花さんと泉ヶ岳さんの経緯というのは詳しく語られることはなかったけれど、とてもとても深いものを感じました。

もちろん優子への愛も深いのだということを、早瀬君と挨拶に行った際に打ち明けていたことから感じました。梨花さん同様、泉ヶ岳さんなりの愛の形です。

 

【森宮さん】

森宮さんすき〜

 

必死に"父親兼母親"になろうとしているけれど、ちょっとずれている節もあって、空回ってる部分もある。でも、だからこそ優子にはその想いはしっかり伝わっていて、森宮さんと優子、2人で家族となれているのだ、と感じました。

 

森宮さんは最期まで気にしていたけれど、家族になるのに、親子になるのに、"父親らしさ"とか"母親らしさ"とかって、いらないんじゃないかな。親子といっても、1人の人間と人間じゃないですか。だから友達や恋人との関係性と同じく、個別の関係性として、お互いに想いあえる関係かどうか、これに尽きるんじゃないかなと思います。

 

つまり、森宮さんと優子、この2人の関係性というのは名前のつけられるものではないし、名前に縛られるようなものじゃない。

 

『まさか。最後だからじゃないよ。森宮さんだけでしょ。ずっと変わらず父親でいてくれたのは。私が旅立つ場所も、この先戻れる場所も森宮さんのところしかないよ。』

 

呼び名に想いが込められている描写がとても好きですが、「お父さん」ではなく「森宮さん」という変わらない呼び方も、2人の特別で大切な関係性を象徴していて、すてきです。

 

【優子】

向井先生の指摘通り、本当にたくさんの愛情をたくさんの親から注がれているなぁ、と思いました。それは一般的な親から注がれるものとは違うかもしれないけれど。

 

いちばん好きなくだりは、森宮さんとピアノの件で気まずくなってから、周囲に相談しながらも、最終的には二人で中島みゆきの歌を延々と歌って昇華させるやつ。

 

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読み終わってからしばらく、多幸感がすごかったです。瀬尾さんの他作品も漁りたい。

『ホットココアを、お願いします』

青山美智子さんの『木曜日にはココアを』を読みました。

 

青山さんは、今年の本屋大賞候補になっていた『お探し物は図書室まで』が初対面で、候補10作の中で最も個人的に気に入った作品の一つでした。

 

普段の私は割と重め、暗めな作品を選んでしまう傾向があるのですが、『お探し物は図書室まで』では本当に元気をもらって、私の読書生活に、この方向性も欲しい!!と思いました。なので、今回は2作目として楽しませていただきました。

 

本作は連作短編形式で、全部で12編もあり、1編1編は、分量としてはかなりコンパクトです。でも、登場人物たちや出来事がふんわりと繋がっていて、バトンが渡っていきながら、最期には……という感じでした。なので、1編1編にしっかり満足感があるし、一本の小説としてもかなり綺麗な着地を決めています。

 

緩いリンクや、刺さるフレーズが散りばめられていて、読んでいてとても心地のよい作品でした。

 

では、以下はネタバレありで感想を書きます。

 

 

 

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12編もあるので、それぞれ端的に。

 

【木曜日にはココアを】

本作を代表するような編ですし、最期に活きてくる編です。

いつもの場所をオススメしてあげるなんてこと、思いついても、私、とてもできないので羨望の眼でみてました。

 

【きまじめな卵焼き】

母親だから、家族だから、こうしてあげなきゃいけないなんてこと、ひとつもないんだよ、輝也くんには多分ちゃんと伝わってるよ…と偉そうに言いたくなりました。

 

【のびゆくわれら】

泰子先生がツンデレでした。まぁツンデレかどうかは置いておいて、直接話をしていても意思疎通って想像以上に難しいよな、と最近の実体験も重ねながら感じました。

 

【聖者の直進】

泰子せんせー!

理沙が教師に言われたこと引きずっていたりしたけれど、言葉って重いよなぁ…。

 

【めぐりあい】

50年後、どうなっているかなんてわからない。

だけど今、50年後も一緒にいたいと思う。

そう願える人が隣で笑っている、この瞬間よりも大切なものなんてない気がした。

先の見通せない未来を不安がるだけではなくて、叶えたい未来に縋るわけでもなくて、未来を願う"現在"の自分の気持ちを、大切にする。これすき。

 

【半世紀ロマンス】

甘く見えるのにしょっぱいなんて、まるで人生よね。

二人の深みがすごい…

 

【カウントダウン】

これいちばん好きかも。語彙力ないので感想書けないけど。彩瀬さんの作品と近く、現実と幻想が両立した世界観に惹かれるのかも。

 

【ラルフさんの一番良き日】

おしゃれ〜〜〜!!

短編なので、ラルフさんとシンディの関係性は深く描かれなかったけど、それがかえってよいというか、勝手に脳内で都合の良いように補完しやすいというか。

 

【帰ってきた魔女】

あ〜〜アンサー短編になっててとてもよい…。グレイス先生の茶目っ気ある感じもとてもすきです。

 

【あなたに出会わなければ】

文通ってあこがれの一つです。

 

トリコロールの約束】

でも本当は、そんなものはどこにも実在しないのだ。今ここに、たしかにあるのは、呼吸をしている私、笑っているマコ、咲いているサクラ。

〜〜

私はただ、約束の日を楽しみにしながら生きていよう。

『めぐりあい』の引用と通ずるところがありますね。約束の日が実際に来て願いが実現することを楽しもうというのが主眼ではなくて、約束の日を楽しみに待つことができている現在を、幸福に生きていこう、が主眼にあるようで、とても心地のよい世界でした。

 

【恋文】

最期はココアさんかな〜と思ってはいましたが、やはり。怒涛の伏線回収が鮮やかです。

『ココアさん』のくだり、泣いていたくだり、ココアをこぼしたくだり、全部繋がってきましたね。

 

「言葉が通じない」って、本当はそういうことなのかもしれません。

『のびゆるわれら』と通ずる描写です。

 

「お熱いので、お気をつけください」と。

そしてラストの一文。鮮やかな着地です!!

 

 

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とても幸せを感じさせてくれる作品でした。今後も、定期的に青山さんの作品を摂取して、バランスよくいきたいなと思いました。

じょうしにいんかんをていしゅつするときは

彩瀬まるさんの『川のほとりで羽化するぼくら』を読みました。

 

方向性としては、『くちなし』とか『森があふれる』に近いのかな。現代の生々しさと、非常に幻想的な雰囲気が両立していて、ザ・彩瀬さんの世界観でした。

 

自分"らしく"と言うけれど、果たして自分は自分のことを言語化できるくらい理解できているのでしょうか?自分が創り上げた自分"らしさ"に捉われてないでしょうか?というのを感じました。

 

あんまり言語化できませんが、章ごとに感想を書いていきます。

 

 

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【わたれない】

これが一番現実よりの作品だったかな?

"正しさ"による断罪シーンが多いけれど、こういうのは際限がなくなってしまうので、システムの問題として捉えていきたいな。

 

【ながれゆく】

事前に公開されていたやつを既に読んでいたので、おさらいでした。

一番幻想よりで、比喩は汲み取りきれなかった部分もあったけど、いいお話でした。

託宣は、意味の押しつけ、はたまた、伝統厨ということでよろしいか?

 

【ゆれながら】

これも不思議なお話だったな…。パンデミックに伴う新しい生殖システムの導入、それにより発生する様々な格差、価値観の対立。

いまのコロナ禍も意識しているのでしょうね…。

 

【ひかるほし】

こういうのはほんとどうしたらよいのだろうね…これも私から言いたいこととしては、"正しさ"による断罪、やめません?ということですね。

 

 

 

『DELTARUNE』はいいぞ

『DELTARUNE』のチャプター1&2を遊びました。

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『DELTARUNE』は、あの『UNDERTALE』の作者であるToby Foxさんの最新作になります。

まだ途中のチャプター2までの公開となっていますが、なんと無料で遊ぶことができます。

 

かなり前にチャプター1だけ公開されていて、存在は知っていたのですが、せっかくなら全編公開されてから通しでやりたいなぁ、と思っていて触らずにいました。

 

ただ、かなり時間が空いてのチャプター2公開となり、これは全編完成まで待ちきれなくなるな、と思い、ネタバレを踏む前にやっちゃうことにしました。

 

やり始めてからは、ほんとうに夢中でプレイしました。ある意味でゲームという枠を超えて、別のところにあるもう一つの世界として、息遣いが感じられる作品でした。また、そう感じさせてくれるのは、『UNDERTALE』と同じく、Toby Foxさんによるトータルデザイン能力の高さのおかげだと思いました。

 

ゲーム性や物語展開を受けて、プレイヤーがやってみたくなる行動、抱く感情にどこまでも寄り添ったゲームデザインになっていると思います。

 

チャプター3以降が早くも待ち遠しいですが、気長に待たせていただきます。

 

では、チャプター2までについては、おそらくほぼほぼのメインイベントをプレイできたと思うので、ガッツリネタバレして感想というか妄想を垂れ流したいと思います。この作品は絶対にネタバレくらわないほうがいいので、ご注意ください。

 

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どうやってまとめるのが一番いいかな〜と思っているのですが、キャラクター中心にジャンルごとに書いていこうかなと思います。なお、考察については妄想をふんだんに詰め込んだ完全に個人的見解ですので、ただの妄想です。見当違いでもご容赦ください。

 

※裏ボス、およびチャプター2の別ルートについてもネタバレしています。ご注意下さい。

 

【プレイ状況】

プレイ前にくらってしまったネタバレとしては、アンテのキャラが出てるけどアンテの続きではないということや、結末は1つしかないよと断言されてるらしいことなど、大枠のものです。幸いにもストーリー内容については完全初見の状態で始めることができました。

 

チャプター1とチャプター2の通常ルートまでは、裏ボスも含めて自力でやり切ることができました。あ、ただ裏ボスがいるらしいというのは事前になんとなくネタバレ受けてたか。

 

そしてチャプター2には分岐ルートがあるらしいという情報だけ得て、いわゆるgルート的行動で頑張ってみましたが話が変わる感じがなく、結局分岐ルート(Aルートと呼ぶのが一般的らしい?)の条件だけは確認して、プレイしました。アンテのgルート以上に、知っててわざわざ行かないと辿り着かない仕様なのがゾッとしましたね…。

 

【クリス】

本作の主人公です。『UNDERTALE』の主人公よりも感情が見え隠れするポイントが多いような気がします。バトルシーンで「こうどう」した時に相手を指さす感じや、踊るときのコサックダンス具合がとても好きです。

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いまのところクリス自身が本作最大の謎と言ってもいいと思いますが、私としては、「クリスの肉体+プレイヤーのタマシイ」状態なのだと解釈しています。

 

クリスは基本プレイヤーが動かしているわけですが、そのなかでもプレイヤーの指示に抗うようなシーンなどがあり、プレイヤーでない意思の存在を感じます。プレイヤーが動かし始めてから、複数のキャラクターに「いつもとなんか違う」と評されることからも、プレイヤーが動かしているクリスとその前のクリスは同一状態ではないと解釈しています。

 

タマシイ(赤いハート)を抜き出すシーンは、アンテのCharaを彷彿とさせる感じでほんとにトリハダもんでしたが、あの描写により、少なくとも肉体(器)とタマシイが同一視できないことは確実かと思います。その器側がクリス、タマシイ側がプレイヤーではないか、という考察です。

 

では、クリスのタマシイは?となりますが、不明です。でも、プレイヤーのタマシイを取り出してもすぐに戻すことから、器だけでは長時間行動できないのでは?と独自解釈を加えれば、クリスのタマシイはどっかに行ってしまった(どこかに囚われていたりする?)のが有力かな、と思いました。

クリスがプレイヤーのタマシイを追い出し、自分のタマシイを取り戻すまでの物語だったりするのかな、という妄想です。

 

そしてチャプター2のラストもトリハダもんというか、本当に鳥肌がたちました。クイーンの闇の泉に対する考察で、ナイフが出てきてから、もしかしたら…と思ってはいましたが、まさかね…。

 

なんにせよ、クリスの器だと解釈している、タマシイを抜き取った後のクリスの行動ですが、

・チャプター1→バタスコをぜんぶ食べた。(+チャプター2の闇の泉を生成?)

・チャプター2→車のタイヤをナイフで切った。+自宅に闇の泉を生成

となります。クリスが騎士説はもちろんあるのですが、ライトナーなら闇の泉を生成できる以上、全ての闇の泉を同一人物が生成したとも限らんのですよね…。なので、チャプター1&2の方もクリスなのかどうかは、疑問です。どちらにしても、たぶんだけど、クリスのなかで闇の泉を生成することにまだ善悪の気持ちはないんじゃないかな。

 

クリスの器の行動から読み取れるのは、たぶんスージィのことが好き、ということですね。チャプター1ラストではスージィのことをプレイヤー指示なしに守ろうとしていたし、チャプター2の車のタイヤは恐らくスージィを泊まらせるためだし、闇の泉生成も、スージィが楽しそうにしてるからだと解釈することもできます。モンスターの子がスージィをいじった時に怒ったような顔もしていました。スージィを家に連れてきた時のトリエルの反応から、クリスには親しい友達があまり居ないであろうということを考えても、友達としてのスージィをとても大切に思っているような気がします。

 

【スージィ】

いわゆる根はいいヤンキーですね。特にチャプター1で徐々にみんなと仲良くなっていくのは非常に微笑ましかったです。ランサーと仲良くなってから城のエレベーターまでのくだり、そしてラストのボス戦の展開とか特に…。

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スージィはいまのところ良くも悪くも分かりやすいので、あんまり考察ポイントはないですが、おうちはどこなんだろうか?というのは疑問ですね。今後もしかしたら関わってくるのかな。

 

あとこれは本当にただの妄想ですが、チャプター2のAルート展開からみるに、最終的にスージィを殺戮モンスターにしようとするルート、あるんじゃないだろうか…。勝手に恐ろしくなっています。

 

【ラルセイ】

かわいいモフモフボーイです。アンテは最終的にマトモなキャラクターなんていませんでしたが(褒め言葉)、ラルセイはなんとマトモです。どんな選択肢を選んでも喜んでくれるし、親身に世話を焼いてくれる…。チャプター2でのスージィとの仲良し具合も微笑ましかったです。

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防御ラルセイかわいい

 

私、チャプター1の裏ボス前に、もちものを圧迫するマニュアルを捨ててしまったのですが、その時の反応が切なくて切なくて…。その瞬間は裏ボスのことばかり考えていて躊躇なく捨ててしまったのですが、チャプター2のクリスの部屋にゴミ箱を用意して「これでいつでもマニュアルを捨てられるよ!」と言われたのでだいぶ後悔しました…。ごめんて……そんなに根に持たんといて…。

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ただ一転して、現時点でマトモだからこそ後半で化けるキャラクターなんじゃないかな、と思っています。ラルセイは、闇の世界及びそのなかでの物語を構築しているんじゃないかな、というのがほぼ妄想レベルの考察です。

 

まずラルセイは、ゲームシステムについて言及します。「たたかう」をコマンドとして捉えていること、「メニュー」の開き方を知っていること、「セーブ」の概念を知っていること、など。スージィがゲームシステムの説明に困惑する描写もあることから、これは意図的なものであると思います。アンテでもゲームシステムに言及するキャラクターは限られていましたし。

 

そして、序盤で説明してくる伝説がたぶん正確でないことです。闇の泉を封印するのは3人の力が必要とされていますが、実際にはクリスとスージィ、またはもはやクリスだけで封印する描写になっています。そして伝説と言っておきながら、最近の話(チャプター1の話)まで入っていることです。これは、クリスとスージィを自分の意図通り動かすためにラルセイが作ったものなのでは?と思いました。

 

そしてチャプター2のAルートでの発言が1番メタいですが、「本当ならここで…!」と通常ルートと展開が違うことに戸惑っています。これは、アンテと同じように、ラルセイもセーブ&ロードの力を持っていると考えることもできますが、だったらそれはそれでAルート展開も予め知っていておかしくない気もします。時間を操っているというより、闇の世界でのストーリーには台本があって、ラルセイはそれを知っている感じがしました。

 

なので、思いついた展開としては、闇の世界はラルセイが作り上げた世界、さらに妄想を広げるならゲーム世界(プレイヤーからみるとゲーム内ゲーム)が土台となっているのではないかということです。

クリスとスージィ、そして自分を主人公とするゲームを作り上げ、そこに何らかの方法で闇の世界と称して現実世界のキャラクターを引き込んでいる。

こうだと仮定すると、ゲームシステムを説明できるし、シナリオも決まっているので、先読みができる。ただ、各キャラクター(特にクリスとスージィ)の行動までは制御しきれていないので、うまく自分の筋書き通りにことが運ぶように、マトモキャラの立ち位置で導いていこうとしている。どんな選択肢でも喜んでくれるのも、逆にどんな選択肢でも喜ぶことで物語をコントロールするため。そんなことを考えました。

この仮説でいくと、チャプター2までの闇の泉はラルセイが用意したものの可能性が高いと思っています。だからこそ、クリスが生成したことが確定しているチャプター3でのラルセイの反応が楽しみです。

 

世界作ったはさすがに妄想が過ぎるかな…。でも何らか知っていることを隠しているのは確実だと思うので、今後の展開が楽しみです。

 

そしてラルセイのもう一つの謎としては、アズリエルでは?ということですよね。先程の仮説のゲーム世界というのも、アズリエルとラルセイを同一視した場合に、アズリエルがゲーム好きな描写が多いことからの妄想になります。ゲーム世界を正しいとすれば、遠隔からでも参加できたりするだろうし、クリスとスージィ同様、地上世界での見た目とは変わっているので、クリスやノエルは気づかない(とはいえノエルは言及しようとするシーンがある)。特にメガネは、自分がアズリエルだとバレないようにするための変装なんじゃないかな、と思いました。スージィがメガネを盗んでからかうシーンがありますが、とても悲しい顔でやめてと訴えています。

なんにせよ、アズリエルが帰ってくるのが来週、チャプター1つで1日経過していることを考えると、終盤でなんらかの関わりが出てくるでしょうね…。

 

【ランサー】

とてもパピルス味を感じる。序盤は敵だけど阿呆キャラで行く感じとか、突拍子もない感じとか。スージィと一緒に笑うSEすき。

やっぱ敵キャラも魅力的なのが、やってて楽しいですよね。

チャプター2でだいじなものに居て、シーンごとに異なるセリフをしゃべるの、だいぶ中盤まで気づいていませんでした…。これが今回のパピルス電話枠だったか…。いつかもう一度遊ぶときは、こまめに見よう。

 

【クイーン】

クイーンもパピルス味とはちょっと違うけど、序盤からすでにあんまり怖くないというか、後々仲間になる感じがすごい(笑)。クイーンとノエルってもともと関係性があったような雰囲気なんだけど、なんかあるのかな…それとも単にノエルのネット利用事情からクイーンが一方的に把握しているだけなのかな。

なんとなくノエルママの比喩的存在なのかな、とも思いました。またノエルと会う機会があるといいな。

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【ノエル】

チャプター2の主人公と言っても良いのではないでしょうか…。

通常ルートでは、クリスの幼馴染として、スージィに恋する乙女として、少し夢みがちだけど素直で明るい女の子です。冒険を通じて次第に精神的に強くなっていって、ラストではクイーンに物申すまでに成長します。現実ではまだまだママとのすれ違いがあるみたいだけれども、この調子で明るい未来へ進んでいけそう、そんな気持ちになりました。現実世界に戻ってきたあとの、スージィのシッポを探すシーンはほんと可愛かったです。

 

Aルートでは、一番変化のある子です…。クリス、というよりはプレイヤーの指示に従って敵を凍らせ続ける。通常ルートではあんなに微笑ましかった、クリスと2人でスイッチを押すシーンが、あんなに怖いシーンに変わるとは…。冒険を通じて物理的に強くなってしまい、精神的には壊れかけ、プレイヤーに対してクリスよりも忠実になっていきます。

 

ノエルの頭の中でのモノローグに対して直接反応している描写が多数あることから、特に後半はプレイヤーが直接(クリスを介さずに)ノエルに指示を出していると考えられます。よりゲーム的にいうならば、ノエルをプレイアブルキャラとして操作しているというのが正しいでしょうか。

ノエルの記憶が飛ぶ描写があることから、カットされていますがプレイヤーが直接ノエルを操作しているという解釈もできるように思います。普通のゲームでは、ゲームの進行やレベルアップに応じて、主人公以外にもプレイアブルキャラが増えていきますが、そういった当たり前もキャラクター側から見ると、恐怖でしかないですよね。自分の意思とは異なる行動をさせられる操り人形へとなっていく、と皮肉的に描いているのではないでしょうか。

 

現実世界にはちゃんと戻ってきたノエルですが、影響を思いっきり受けていて、現実世界でもプレイヤーに操作権を奪われかけているのではないでしょうか…。うでどけいのくだりは本当にゾッとしました。

 

アンテのGルートは自分がやっている感覚でしたが、これは完全に自分でないキャラクターにやらせている、そしてそれは100%自分(プレイヤー)のせいである、というのが如実に感じられて、非常に心苦しいシーンが多かったです…。それでも知りたくてやってしまうのですが、今回は興味というよりは明確な悪意がないと先に進めないのかもしれません…。

 

そしてこれはルートを問わずですが、ママとの確執、そして現在どこで何をしているのかについては一切語られていないと思われるディセおねえちゃんについて、まだまだ気になることが多いキャラクターです。今後のチャプターでも出番があるといいな。

 

【バードリー】

どう見てもファルコに似ているので、どこだったかでスマブラネタがあったのは笑ってしまいました。

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バードリーもバードリーで、通常ルートでは苦い過去から現在までの経緯があり、でも今回の冒険を通じて少し素直になれそうな微笑ましい展開でした。常に正しくあろうとするのはとても大変だよね。

そしてAルートでは眠ったままなのですが、どうなっちゃっているのでしょうか…??そこがAルートで一番怖くて。ノエルは影響を受けたとはいえ無事に戻ってきたから最悪よいとして、彼はどうなるの……。ノエルに凍らされるのが、「Twitter凍結」とどこかの考察かなにかで書かれていて、不謹慎ながら笑ってしまいました。でも、解凍する未来もあっていいよね…?(自分でやっておきながら)

 

【ジェビル】

チャプター1の裏ボスです。完全に弾幕ゲーで、かなり強くて結構時間がかかりました。クリスが行動不能になると負のループなんですよね…。なんとか倒せました(見逃し)。あとBGMが最高。何度もチャレンジするので何度も聴くことになるわけですが、メガロバニアと同様、何度聴いてもテンションがあげられるというか。

それにしても、いわゆる平和主義者ルートでも強キャラと闘えるシステムなのは、中々の改善点ではないでしょうか。つまり、ゲーム的な楽しさを求めることを殺戮ルートへ進む言い訳にはできない、と…。

 

【スパムトン】

チャプター2の裏ボスかつAルートのボスです。個人的には、ジェビルよりは簡単でしたが、そもそもゲーム性が違うので比べるものではないか。あとはクリス以外も「こうどう」できるようになってるのがデカい。ゲームとしても進化しているな、と思いました。

とはいえ、Aルートボス時は苦戦しました。やっぱり3人居ることに甘えていたんだな…というのがよく分かりました。

そしてジェビル同様、BGMが良すぎる。明らかにメタトンを意識したBGMで、非常にテンション上がりました。

 

【BGM】

今回も全てが好きと言っていいくらい、本当に良いBGMばかりでした。ここ数日、チャプター1&2のBGMアルバムを延々流しています。

チャプター1では、特にルードバスターが好きです。これ聴くためだけに積極的にバトルしたまであります。

チャプター2はA CYBER'S WORLD?です。そのほかも全般にエリア曲がどれも好きで、歩いてるだけで楽しかったです。ほんとすごい。

 

【今後について】

今回は1つの結末しかないと公表されているようです。

クリスの考察でも書きましたが、最終的にはクリスが自分のタマシイを取り戻し、プレイヤーに操作されることのないクリスの望む結末になるんじゃないかな、と思っています。

その過程として、プレイヤーがクリスの協力者となるか敵対者となるかは、プレイヤー次第、というとこじゃなかろうか。

非常に楽しみです。

 

【まとめ】

好き勝手考察してきましたが、私以外にも非常に多くの方がプレイし、考察され、色々な説がでている本作です。この膨大な考察に耐えられているのは、やはりトータルデザインの完成度の高さゆえだと思います。

 

台詞1つ取っても考察されるというのは、逆を返せば、制作側にとっては、台詞1つ取っても整合性・一貫性を取らないといけない、ということです。キャラクターの息遣いを感じさせるために、各キャラクターの言動に細心の注意を払って制作されていることが想像できます。これは並大抵の能力ではないと思います。つまりToby Fox さんは天才なわけですが、天才であってもこれを完成させるには非常にコストと時間がかかるはずです。

なので、私はゆっくりと待ちながら、投げられる機会があれば喜んでお金を投げさせて頂きます。

 

<!--デワデワ〜(ノシ)-->

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あことバンビはあことバンビ

HEROさん(@dka_hero)の漫画『あことバンビ』を読んでいます。

 

友人の某mtmtさんから突然「君これ好きだと思う」とURLが送られてきたのがこの漫画です。 

dka-hero.me

 

読んでみてわかったのは、私はmtmtに完全に趣味嗜好がバレている、ということです。あまりにも私の、特に最近の好みにドンピシャな作品でした。

 

まだ続いているものに感想を記すことはあまりしたくないのですが、想いが溢れてとまらないオタクになってしまったので、記すことで昇華します。

 

あらすじは、特に紹介できることありません。特に序盤は謎が多く、そこも魅力だと思ったので、何も知らないままぜひ読んでください。

 

以下、多分に、主観的な解釈が含まれることをご承知おきください。また、現時点で最新話の92話までのネタバレを思いっきり含みますので、ご注意ください。

 

 

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私が感じた魅力を、大きく分けて2つ記します。

 

①ゆっくりと"正しさ"を捨てていく物語

メインのあことバンビについてです。あこは、幽霊として登場したのち、物語が進むにつれて、端的に言えば中途半端な存在になっていきます。当然人間でもないけれど、幽霊とも違う、どちらにもなりきれない存在です。

 

バンビは、そんなあこをすきになっていくわけですが、序盤で入舟が忠告していたように、「好きにならないこと」「あこが山城さんに戻ることを望むこと」が"世間的な正しさ"です。

 

バンビもそれは理解していて、それでもあこがすきな気持ちがゆっくりと大きくなっていって、ゆっくりと"世間的な正しさ"を捨てて、自分にとっての"正しさ"に正直になって、しあわせになっていっています。

 

そんな気持ちの一つのゴールが、ちょうど最新話の92話の展開ではないでしょうか。言葉にして、縛ってしまう怖さを抱えながらも、これ以上抑えておけない、自分のしあわせを希求する気持ちが、「ずっと一緒にいてほしい」によく現れていると思いました。

 

こういう正しさとの向き合い方というのは、私がいま信奉しております凪良ゆうさんの得意ジャンル(ジャンルという言い方が正しいのか分からないが)になります。特に『神さまのビオトープ』は、人と幽霊の話で、結構設定も似通っていて、通ずるところが多いと思いました。

 

この手の話には「最期まで"正しさ"を押しつけてくる人」が出てくることが多いですが、本作はいなさそうです。なんとやさしき世界か…。あこが、基本バンビ以外にも視認でき、会話もできるというのが大きそうです。

 

②"あことバンビ"という関係性

こちらはメインのあことバンビだけに留まりませんが、各組合せの、2人だけの特別な関係性が、魅力だと感じました。

 

①で記したように、あこは中途半端な存在です。だから、あことバンビの関係性を形容するのに、人間と幽霊では変だし、そもそもそんな客観的な関係性だけじゃない。かと言って、恋人、家族、同居人とも言い難い。つまり、あことバンビの関係性は"あことバンビ"以外に言いようがないわけです。

 

ある2人の関係性が一言で言えるものではない、というのは現実を含む全てにおいてそう言えると思いますが、それを思い出させてくれるような関係性の描き方が、とても私の好きな描き方です。

 

また凪良さんを登場させますが、『流浪の月』はまさしく、こういった関係性の描き方をされておりました。

 

今後どうなるかはわかりませんが、”恋人”などのように、関係性に無理に名前をつけてしまったら、どうしても”恋人らしさ”が2人を苦しめてしまうような気がするんです。どうか、あことバンビの2人にとってのらしさを追い求めてほしいとおもいます。これは、田辺聖子さんの『ジョゼと虎と魚たち』に収録されている『それだけのこと』の感覚に通ずるような気もしますが、ちょっと並列で語るのはどちらにとっても失礼か…。

 

こういう風に解釈しているので、タイトルが『あことバンビ』であるのも、シンプルなようでいて、2人の関係性をこれ以上なく形容しているタイトルだな、としみじみ思いました。

 

あとは、単純に迂遠な感じがすきです。お互いに気持ちをなんとなく察しつつ、踏み込めない。でも大事なところではしっかり一歩踏み込む。でも核心には迫らない、変わるのが怖くて決定的な言葉にしようとはしない。でも言葉にしなくても、心はちゃんと通じあってる気がする。最高です。

 

元々こういう感じが好きでしたけど、北村薫さんの『覆面作家』シリーズで調教されてもっと好きになりました。

 

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さて、オタクが過ぎました。これからもまったりと更新を待ちながら、楽しみに生きてゆきます。『未完成定理』ロスの私に新しい漫画を与えてくれてありがとう。

月への祈り

石井ゆかりさんの『月のとびら』を読みました。

 

以前読んで大好きな、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』で登場した作品で、とても気になってしまって読みました。

 

『月』というものを、人々がこれまでから現在にかけてどう解釈し、付き合い、祈りの対象としてきたか、についてよく知ることができました。

 

単純な知識として新しく知ったこともありますし、新しい価値観に触れることもできました。

 

普段小説しか読まないですし、なにより占いには興味のない人間なので、新鮮な世界でした。

 

ネタバレというものでもないですが、少し内容で思った点について書いていきます。

 

 

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旧暦が月基準に決まっている暦なの、初めて知った…(無知)。そのうえで、月の満ち欠けを物事に置き換えてその象徴としたり、不変と可変の境界的存在であったり、なかなか新鮮な価値観でした。

 

特に、新月を「月が新しく生まれる」と捉えるのは、なるほどと思いました。新しい月、なわけですよね。月の満ち欠けは、今でこそ物理的に説明できる現象であるものの、分からない時代で考えればそういった捉え方になるのもある意味では自然なことなのかも、と思いました。

 

そして終盤は、『月ぜんぜん関係なくなっちゃったよ!』とハライチ澤部のツッコミが入りそうな話展開でしたが、とはいえ興味深く読むことができました。

 

まずは、『自分の力ではどうにもなりようがないもの』に自分の行動の軸を置かないこと、これは本当に私が心がけていることです。めちゃくちゃ共感して読みました。

 

また、「死」に対して、そのものを強く意識してしまうあまり、それまで生きていたということ、その人がしてくださったことにあまり意識がいかないという話は、なるほどでした。

そういう祈りの方法もあるのだな、と思いました。誰かにたしかに繋がっていくこと、これは恩送りにおける祈りとよく似ていて、私好みです。

 

あと穢れの感覚とかも、なるほどそういう感覚から来ているのか、と思いました。

 

改めてみると、後半は本当に月、関係なくなっちゃってますね(笑)

うーちゃんとかか

宇佐見りんさんの『かか』を読みました。

 

本屋大賞の時に読んだ、芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』で度肝を抜かれたので、同じく色々と賞を受賞されていて、かつデビュー作という本作を読みました。

 

本作もえげつない表現力が爆発していました。うーちゃんの感情がひしひしと伝わってきて、もう完全に抱えきれないレベルになっている状態が、読んでいる自分にも伝播してくるんですよね。自分をうーちゃんに投影するというよりは、うーちゃんが自分になっている感覚というか、うーちゃんとして本作の世界を過ごしている感覚というか…。

 

なので、正直に言えば結構疲労困憊な読後感でした。でも、それだけ本作には大きな力が宿っているということなのだと思います。

 

また、『推し、燃ゆ』と同様にSNSが出てきますが、相変わらずこのリアリティがすごい。SNSをなにか大事なキーワードにするためにSNSを出しているわけでは決してなくて、現代の心情描写はSNSなしではあり得ない、そんな雰囲気を感じていて、それが私が特に好きな理由です。

 

では、以下はネタバレありで書いていきます。

 

 

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感想というよりは、個人的にえげつないと思った表現ポイントを列挙していきます。

 

昼下がりの浴槽は、湯もはらないのにお日さんの光をふちギリチョンまで溜めています。

p5。この前段の金魚のくだりもヤバいけど、この表現、特にいいな〜と思いました。

 

うーちゃんはもうそんな昔っから、他人を他人のまま痛がることができないんでした。

p16。深いところではみんなうーちゃんと同じじゃないですか??わたしだけ??

 

はっきょうは「発狂」と書きますがあれは突然はじまるんではありません、壊れた…(中略)…そいつがはっきょうです。

p26。発狂へと至る道の連続性を非常にわかりやすく例えていますね。

 

今まで実体のなかった劇団俳優のアイコンや草花のアイコンがきゅうに生々しく思えてアプリを落としました。

p49。めちゃくちゃわかる〜〜SNSを利用している人間なら一度はあるのでは?そんな普遍的なものではないか??

 

話題に困ったらすぐそいなことを言って座を持たそうとするんが不快だと思いました。

p52。めちゃくちゃわかる〜〜(2回目)。このタイプの人間が、私一番苦手なんです。本当に、お互いのために、なるべく関わりたくない。

 

人間の肉体は圧倒的な祈りの攻撃には耐えきれんのよ。

p75。めちゃくちゃわかる〜〜(3回目)。でも、こんなに的確に表現できるの天才すぎる…。祈りの対象が人間であるということは、『推し、燃ゆ』のテーマというか状況と似た部分がありますね。

 

それに気いついたとき、うーちゃんははじめてにんしんしたいと思ったんです。

p89。ここで話が繋がってくるのがえぐい。言語的説明は一切できないんだけど、ここまで読んでくると、うーちゃんの言いたいことが感覚的にはわかってくるのがすごいところです。

 

ばちあたりな行動はかみさまを信じたうえでちらちらと顔色をうかがうあかぼうの行為なんでした。

p109。これは言い得て妙ですね。

 

うーちゃんたちを産んだ子宮は、もうどこにもない。

p115。とってもせつないラスト…。ただ、これは考え方だと思うんですよね。無くなったからといって、「今まであったこと」は否定されないし、むしろ際立つと言ってもいい。かかの子宮はなくなっても、かかがうーちゃんたちを産んだことはかけがえのないものとして残って輝いているんだよ…。うーちゃんにとってはむしろその方が残酷なのかもしれないけれど…。

 

 

全体を通して、おばあちゃん→かかを中心に、家族における「言葉の呪い」がかかを、うーちゃんをはっきょうさせているのだろう、と感じました。