青山美智子さんの『木曜日にはココアを』を読みました。
青山さんは、今年の本屋大賞候補になっていた『お探し物は図書室まで』が初対面で、候補10作の中で最も個人的に気に入った作品の一つでした。
普段の私は割と重め、暗めな作品を選んでしまう傾向があるのですが、『お探し物は図書室まで』では本当に元気をもらって、私の読書生活に、この方向性も欲しい!!と思いました。なので、今回は2作目として楽しませていただきました。
本作は連作短編形式で、全部で12編もあり、1編1編は、分量としてはかなりコンパクトです。でも、登場人物たちや出来事がふんわりと繋がっていて、バトンが渡っていきながら、最期には……という感じでした。なので、1編1編にしっかり満足感があるし、一本の小説としてもかなり綺麗な着地を決めています。
緩いリンクや、刺さるフレーズが散りばめられていて、読んでいてとても心地のよい作品でした。
では、以下はネタバレありで感想を書きます。
------------------
12編もあるので、それぞれ端的に。
【木曜日にはココアを】
本作を代表するような編ですし、最期に活きてくる編です。
いつもの場所をオススメしてあげるなんてこと、思いついても、私、とてもできないので羨望の眼でみてました。
【きまじめな卵焼き】
母親だから、家族だから、こうしてあげなきゃいけないなんてこと、ひとつもないんだよ、輝也くんには多分ちゃんと伝わってるよ…と偉そうに言いたくなりました。
【のびゆくわれら】
泰子先生がツンデレでした。まぁツンデレかどうかは置いておいて、直接話をしていても意思疎通って想像以上に難しいよな、と最近の実体験も重ねながら感じました。
【聖者の直進】
泰子せんせー!
理沙が教師に言われたこと引きずっていたりしたけれど、言葉って重いよなぁ…。
【めぐりあい】
50年後、どうなっているかなんてわからない。
だけど今、50年後も一緒にいたいと思う。
そう願える人が隣で笑っている、この瞬間よりも大切なものなんてない気がした。
先の見通せない未来を不安がるだけではなくて、叶えたい未来に縋るわけでもなくて、未来を願う"現在"の自分の気持ちを、大切にする。これすき。
【半世紀ロマンス】
甘く見えるのにしょっぱいなんて、まるで人生よね。
二人の深みがすごい…
【カウントダウン】
これいちばん好きかも。語彙力ないので感想書けないけど。彩瀬さんの作品と近く、現実と幻想が両立した世界観に惹かれるのかも。
【ラルフさんの一番良き日】
おしゃれ〜〜〜!!
短編なので、ラルフさんとシンディの関係性は深く描かれなかったけど、それがかえってよいというか、勝手に脳内で都合の良いように補完しやすいというか。
【帰ってきた魔女】
あ〜〜アンサー短編になっててとてもよい…。グレイス先生の茶目っ気ある感じもとてもすきです。
【あなたに出会わなければ】
文通ってあこがれの一つです。
【トリコロールの約束】
でも本当は、そんなものはどこにも実在しないのだ。今ここに、たしかにあるのは、呼吸をしている私、笑っているマコ、咲いているサクラ。
〜〜
私はただ、約束の日を楽しみにしながら生きていよう。
『めぐりあい』の引用と通ずるところがありますね。約束の日が実際に来て願いが実現することを楽しもうというのが主眼ではなくて、約束の日を楽しみに待つことができている現在を、幸福に生きていこう、が主眼にあるようで、とても心地のよい世界でした。
【恋文】
最期はココアさんかな〜と思ってはいましたが、やはり。怒涛の伏線回収が鮮やかです。
『ココアさん』のくだり、泣いていたくだり、ココアをこぼしたくだり、全部繋がってきましたね。
「言葉が通じない」って、本当はそういうことなのかもしれません。
『のびゆるわれら』と通ずる描写です。
「お熱いので、お気をつけください」と。
そしてラストの一文。鮮やかな着地です!!
------------------
とても幸せを感じさせてくれる作品でした。今後も、定期的に青山さんの作品を摂取して、バランスよくいきたいなと思いました。