ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

月への祈り

石井ゆかりさんの『月のとびら』を読みました。

 

以前読んで大好きな、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』で登場した作品で、とても気になってしまって読みました。

 

『月』というものを、人々がこれまでから現在にかけてどう解釈し、付き合い、祈りの対象としてきたか、についてよく知ることができました。

 

単純な知識として新しく知ったこともありますし、新しい価値観に触れることもできました。

 

普段小説しか読まないですし、なにより占いには興味のない人間なので、新鮮な世界でした。

 

ネタバレというものでもないですが、少し内容で思った点について書いていきます。

 

 

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旧暦が月基準に決まっている暦なの、初めて知った…(無知)。そのうえで、月の満ち欠けを物事に置き換えてその象徴としたり、不変と可変の境界的存在であったり、なかなか新鮮な価値観でした。

 

特に、新月を「月が新しく生まれる」と捉えるのは、なるほどと思いました。新しい月、なわけですよね。月の満ち欠けは、今でこそ物理的に説明できる現象であるものの、分からない時代で考えればそういった捉え方になるのもある意味では自然なことなのかも、と思いました。

 

そして終盤は、『月ぜんぜん関係なくなっちゃったよ!』とハライチ澤部のツッコミが入りそうな話展開でしたが、とはいえ興味深く読むことができました。

 

まずは、『自分の力ではどうにもなりようがないもの』に自分の行動の軸を置かないこと、これは本当に私が心がけていることです。めちゃくちゃ共感して読みました。

 

また、「死」に対して、そのものを強く意識してしまうあまり、それまで生きていたということ、その人がしてくださったことにあまり意識がいかないという話は、なるほどでした。

そういう祈りの方法もあるのだな、と思いました。誰かにたしかに繋がっていくこと、これは恩送りにおける祈りとよく似ていて、私好みです。

 

あと穢れの感覚とかも、なるほどそういう感覚から来ているのか、と思いました。

 

改めてみると、後半は本当に月、関係なくなっちゃってますね(笑)