ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

「しみったれたSSサイズじゃあない、大きな大きなLLサイズだ」

覆面作家の愛の歌」は、北村薫さんの覆面作家シリーズ、第2作です。

 

いやぁ、第1作に続いて非常に面白かったです。普通に事件性のあるものが題材となっていて日常の謎ではないですが、謎に対する細かい伏線にしてやられました。

 

そして何より登場人物の魅力がしっかりと出ています。千秋さんの安楽椅子探偵ぶりは健在ですが、やっぱりその上で現地に赴いてこそ千秋さんですね。新しく静さんを迎えて、少しずつ関係性にも変化が出ていますね。

 

以下、ネタバレして少し細かい感想を。

 

 

・お茶の会

税金のこと全くわからないんですけど、そんな理不尽な決まりになっているんですか…。わりと現実でも起きそうな活人事件だなと思ってしまいました。

そして静さん…邪魔者ポジかと思いましたがそんなことはなく面白い方でした。静さんに対してもとても親切ですね。

 

・溶ける男

ここは突っ込まずにはいられない…小二の子ども経由で聞いた変なおじさんの言い分を信じて、下町の人情話で片付けてしまうのおかしくないか??とはいえ、今のご時世が厳しいだけかもしれないね。

千秋さんの思考回路の広さっぷりがよく分かる回でした。犯人の特殊な思考回路をも予想できてしまうとは…千秋さんもサイコパ(ry

真面目な話、二重人格であるが故に、そういったことに長けているんじゃないかな、と思いました。

 

・愛の歌

トリックはだいぶ複雑だったが、これぞミステリー!って感じでした(語彙力)。

ここで冒頭に千秋さんの家庭事情が語られ、そして事件中のハプニングがあり、オチへと繋がる…今後どう転んでいくか、とても楽しみです。それにしても千秋さんのお茶目なオチ(照れ隠し?)が可愛いですね。挿絵の顔はなんなんでしょう……。

 

・全体

解説で知ったことですが、北村さんの覆面作家時代と状況を似せているようですね。先輩編集者のフェードアウトだったり、静さんだったりはそうやって生まれたのか、と思うと、感慨深いような、少し寂しいような気がします。

 

 

第3作でおしまいのようで、読むのが勿体なくてたまりません。ただ、千秋さんの過去話(二重人格云々)や、二人の関係性がどうなっていくのか、とても気になります。