町田そのこさんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を読みました。
町田さんは、本屋大賞の52ヘルツに続いて2作目ですが、早速とんでもない作品に出会ってしまいました。
なによりもタイトルがお洒落ですね。そして解説でも触れられていましたが、書き出しもまぁーオシャレというか、読者を一気に引き込む感じというか。
短編集ですが、同じ世界観を生きていて、ゆるく繋がっています。このつながり具合が、絶妙。
個人的には、『カメルーンの青い魚』が断トツで好きです。
では、以下ネタバレありで。
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【カメルーンの青い魚】
完成度の高さよ…。あんまり言語で魅力を説明できないのがもどかしい。
サキコとりゅうちゃんの関係性が切ない。結局この2人は一緒に居られないわけだけど、2匹の魚と、2個の前歯と、絶妙な対比がされていて、いい。最後の前歯を確認するラストも、どこまで想いが込められているのか定かではないけれど、いい。
舌先で前歯をなぞったら、そこにはぴっちりと歯が並んでいた。
【夜空に泳ぐチョコレートグラミー】
啓太のお話!それだけでワクワクしました。後半に明かされる啓太の真意、さっちゃんとの表現し難い特別な関係性、いいですね…。
ラストの啓太の祈りのシーンは、最高です。
そして初めての世界があの魚にとって優しいものでありますように。行きやすい場所になりますように。
【波間に浮かぶイエロー】
他人の人生に触れて、自分の人生を救ってもらう。これって、読書体験と近しいものがありますよね。
この短編に限らないけど、導入とオチが綺麗なので、スッキリする。
恋人は私の中で、姿を変えて泳いでいる。
【溺れるスイミー】
大切な人から求められている振舞いになんとか応えたい、かといって自分自身の欲求に抗い切ることもできない。自分と同じような人を見つけて救われたような気持ちになっても、やっぱり完全に同じなんてことはなくて、自分を肯定できない。
ねえ、私は、どこが壊れているのでしょうか。群の中で生きていきたいと、はぐれたくないと思っているくせにどうして、それができないのでしょうか。こんなにも、望んでいるのに。
でも、それでも肯定してくれる人を支えにして、生きていく。綺麗事だけでは生きていけないけれど、綺麗事がないと、祈りがないと、生きていくこともできないのです。
私はあなたのくれた『しるし』で生きてみる。いつかきっと、水槽の中で、群の中で笑えると信じて。
【海になる】
導入が秀逸すぎる。
今日は私の誕生日で、とてもいいお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った。
彩瀬さんの『やがて海に届く』を彷彿とさせるような作品。祈ることは違えど、海が与えてくれるものは同じなんじゃないかな。
【まとめ】
以上。どの短編もうまく言語化できてないですね…。とにかく、全体的には「祈り」の物語のように感じました。