ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

伏線回収の鬼👹

朝倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』を読みました。

 

本屋大賞ノミネート作、9冊目!ゴールまであと一歩です。

 

朝倉秋成さんは今回が初めましてになります。本作については、名前はノミネート前から見かけることはありましたが、就活がテーマの作品は、やはり中々自分からは手が伸びにくく…。

 

そうして読んでみたら、展開の仕方が非常にうまく、常に続きが気になって気になって仕方ない展開がずっと続いていました。これは一気読みする人、多いんじゃないかな。

 

何より、鬼の伏線回収力でした。あらゆる要素が伏線となり、また効果的に回収されていくさまは圧巻でした。

 

では以下、ネタバレありで語りたいと思います。

 

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■ 前半

最終選考当日にかけての当時の話と、現在の各登場人物へのインタビュー形式の展開で進んでいく形で、犯人は誰だ?ということが主眼になっていました。

他作品のネタバレになるので避けますが、某作の影響もあり、冒頭のつかみの段階で、嶌さん、めちゃくちゃ怪しい…!!と根拠なく思っていました。圧倒的メインヒロインポジで、謎の涙を流す彼女は明らかに目立っていて、怪しいですね。これが本作の罠だとも知らずに、嶌さんの失言がないか注意深くみながら読み進めてました。

最終選考のなかで、一人、また一人と闇が暴かれ、効果的にインタビューが挟まれ、クズっぷりを強調していく展開。この時点においては、インタビューが挟みこまれているということは、"犯人"ではないことを示唆しているので、容疑者が段々減っていくことにもなります。ここもうまい所だなと思いました。読者を推理させた気にしてくれる。

最期に、嶌さんが犯人であることが示唆されて終わるわけですが、まだページ数がこんなに…!これでは嶌さんは犯人ではない、ということがメタ的にわかってしまうのは萎えポイントです。

 

■ 後半

嶌さん主人公に代わり、本当の解決パートですね。怒涛の伏線回収パートとも言えます。前半の中でも伏線とその回収は細かくありましたが、さらに大がかりな伏線回収がされていく様は見事でした。

前半のインタビューでの違和感の回収、当時の細かい伏線の回収。久賀くんがスミノフ知らない問題、嶌さんが気づいた時点で一緒に久賀くんだとわかって少しうれしい。

 

■ 伏線

本作には伏線というかどんでん返し要素として、登場人物も知らなかった要素と、叙述トリック的な要素が入り混じり、すごいことになっています。

特に後半の要素についてちょっと意図的すぎるきらいがあると感じてしまったことと、回収されるための伏線、伏線を成立させるための展開、という雰囲気を少し感じてしまいました。インタビューで言っていたようなことや、最期に明かされる各自の本当の真実について、選考会当日で誰も説明・弁明しなかったのは全員誠実すぎないかなぁ…とか、スミノフは流石に調べりゃわかるよ…とか。

でも伏線回収エンタメとしてみれれば、こんなに見事なことはないと思います。

 

■ 本作の構成・展開のうまさについて

本作は、どんでん返しに慣れた現代読者を狙った構成・展開になっていると感じ、ここが一番新鮮な魅力だったと思います。

オビ文で、六人全員がクズであると煽られ、最終選考では少しずつそれが暴かれていく展開となっています。こうなると、どんでん返しとしては、犯人がこいつらを圧倒的に超えるクズであることが最後の最後に暴かれるような勧善懲悪?展開を予想してしまいますよね。

その予想が最期のどんでん返しで鮮やかに裏切られることで、新鮮などんでん返しストーリーとして印象に残ります。

犯人についても、私がそうであったように、典型的などんでん返し作品において最も怪しい立ち位置である嶌さんを読者に疑わせる展開になっていたと思います。

 

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朝倉秋成さんは他作品も伏線回収が売りだったりするのでしょうかね。

作品調べてみたいな、と思いました。