ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

白いだけじゃない少女たち

氷室冴子さんの『さようならアルルカン/白い少女たち』を読みました。

 

本作は、氷室冴子さんの初期傑作を今一度本にしたという作品集です。

 

氷室冴子さんについては、お名前は知っていましたが対面するのは初めてでした。ただ、こういう雰囲気の女流作家さんの作品はわたし好きになる傾向があるので、ビビッと来て読んでみたという次第です。

 

そしたらまぁ、見事なまでに刺さる作品たちでした。一つ前に読んだ芝木好子さんの作品集と同様、作品集だけあって強者ぞろいの短編集でした…。ここ最近、『愛じゃないならこれは何』から始まって『新しい日々』へと続き、本作につながって、個人的に最高傑作な読書が続いていて逆に怖いです…今年後半はどうなっちゃうんだ…。

 

オビ文では『少女小説家』と書かれていたので少女小説なのだと思っていたのですが、そんなことはなかったです…。オビ文にある通り、少女小説家としての原点みたいな作品が多い雰囲気でした。

 

個人的には『あなたへの挽歌』がめちゃ好きです。

 

では、以下ネタバレありで書いていきます。

 

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■ さようならアルルカン

どこか神秘めいた少女と少女の出会い。王道のガールミーツガール展開だと勝手に思っています。

次第に神秘めいた事柄が世俗的に落ちてゆくにつれ、少女が少女に祈ることをやめる展開も王道ですね。(最近何かにつけ"祈り"と紐づける癖があり、良くないと思っています…)

ラストの邂逅は展開として非常に鮮やかです。

 

■ あなたへの挽歌

解釈不一致だった推しを捨てる話です。我々がいかに自己中心的か、他者にいかに理想を押しつけていることか!がよく分かります。

 

■ おしゃべり

これはエンタメとして非常に完成度高かったです。10ページの短編なのにこの満足度は異常ですよ…。これは逆で、理想を押し付けられた推され側の物語ですね。

 

■ 悲しみ・つづれ織り

せつねぇ…。これもめちゃ好きです。ふられた後に、自分が相手をいかに好きだったか気づくのは、悲しいことのように思うけれど、お姉ちゃんのおかげでかけがえのないことになりますね。

 

■ 私と彼女

これもエンタメとしての完成度が異常。ほっこり笑えるのと、ちょっぴりシリアスなのと、バランスがいい。

 

■ 白い少女たち

これだけ短編ではなくて中編~長編?ですね。白い少女たちが、白いだけじゃないことに苦しみながら、それでも生きていく成長?物語です。個人的には倫子のなんだかんだの面倒見の良さに惚れます。

 

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ぶっ刺さり作品集だったので、また氷室冴子さん読みます。最近読みたい作家さんが増えすぎていてやばい…。