辻村深月さんの『鍵のない夢を見る』を読みました。
直木賞受賞作ということで手が伸びました。最近、"文学賞受賞"の文字に弱くなっています。辻村さんの作品はいくつか読んでいますが、読んだものはミステリ作品が多く、本作のような雰囲気の作品は個人的に新鮮でした。
しかもまぁ内容が非常に私好みでした。女性たちの暗転を描いた短編集で、私の好きな彩瀬さんや町田さんの作風に近いです。何より、いまこの年代で読むことができたのはとてもタイミングが良かったなと思いました。
短編集で話の繋がりも特にないのですが、謎の一体感を持っていて、ラストにかけてうなぎ登りで盛り上がっていくつくりになっていました。ここは個人的に辻村さんらしさが出ているなと感じました。結構超大作も沢山描かれている方なので、このあたりの調整が上手いのだろうなと思います。
個人的には『美弥谷団地の逃亡者』と『芹葉大学の夢と殺人』が特に好きです。
では、以下はネタバレありで書いていきます。
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短編ごとに感想を書いていきます。
読んでから暫く経ってしまったので思い出しながら簡単に…。
■ 仁志野町の泥棒
あまり本筋ではないかもしれないが、自分の中で過去の人になってしまっている人(失礼)の今現在を、偶然SNSなどで目にした時と同じ気分だろうか…。
■ 石蕗南地区の放火
この作品は私に刺さる。こういう恥を、私は常に恐れている気がします。
■ 美弥谷団地の逃亡者
前半の美衣のぼんやりした雰囲気が、作品構造のためでもあったと思うけれど、倒れた母親を見てからラストにかけて、ずっと現実を受け入れられないでいたのかな、と思いました。ラストでようやく受け入れられたのかな。美衣の感情をもっと追いたいなと思わせてくれる作品でした。
■ 芹葉大学の夢と殺人
これは結構、斜線堂先生の地獄小説と通ずる所があって非常に好きです。理由は全く分からないのですが、ダメダメ彼氏を捨てきれない話が結構すきなんですよね…。
この作品も未玖の心情変化が激しく、それを追うだけで楽しいですが、ラストの祈りは非常に愛が深いなぁと思いました。
■ 君本家の誘拐
いつかの未来にこの作品を思い出しそうで怖い。できることなら早く忘れたい、そう思うくらいには後味悪めです(褒めてます)。
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新鮮な辻村さんをみました。辻村さんもジャンルが幅広いお方であるということがよく分かりました。これからもポツポツと読んでいけたらいいな。