ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

「おいしいごはん」とは?

高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』を読みました。

 

本作はつい最近、芥川賞を受賞されています。帯文も『心のざわつきが止まらない。最高に不穏な傑作職場小説!』となっており、食べものもテーマで非常に私好みっぽいので手を取りました。純文学にちょっとだけ慣れてきたので、軽率に手を出しても大丈夫だろうと思ったというのもあります。

 

読了直後の感情としては「はぁ~~?すごすぎる…」でした。この独特で言語化が難しい読後感情と感想は、やっぱり純文学ど真ん中だからだし、これが良さなんですよね~。純文学に慣れてきていなければ「???」で終わっていたと思うので、自身の成長?も実感できました笑。

 

文章のテイストとしては癖がなくて読みやすく、一見して純文学にはみえませんが、内容と展開はもう…。この誰にも感情移入しきれない絶妙な感じ、共感したくない感情に共感してしまう感じ、めちゃくちゃ芥川賞なんですわ…。

 

本作が2022年読書の読み納めとなったわけですが、チョイスは完全に間違えました笑。この感情を引きずって年を越さねばならぬのだ…。

 

では、以下はネタバレありで感想を書いていきます。

 

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残念ながらうまく言語化できないと思いますが、断片的に今思ってることを頑張れる範囲で書いていければと思います。

 

■ 食に対する価値観

本作は"食"が一つのテーマになっています。仕事や恋愛に対する価値観が人それぞれであるように、食に対しても人それぞれの価値観があるし、なんならその人の大元の価値観が一番よく表れているような気もしました。

芦川と居るときと押尾と居るときで食に対するスタンスが変わる二谷が特に象徴的でした。

 

■ 絶妙に感情移入しきれない登場人物たち

現実にガッチリハマる人はいないんだけど、非常に既視感を感じる登場人物たち…。理解できた気になった次のシーンでは一気に突き放されるこの感じ。自分の中にある嫌な感情を引きずり出されて共感せざるを得ないこの感じ…。

 

■ ラスト

このラスト、めっちゃ純文学よな…。すれ違いは何にも解決していない、善も悪も何も区分けされず、断罪もされていない。ただただこのまま人生が連続的に続いていくんだろうな、というこの感じ。妙にリアルなんですわ。

 

■ 印象的な表現

文体や表現はそこまで癖がないのですが、それでも印象的な表現が所々で見られました。

 

なるべくちゃんとしていない、体に悪いものだけが、おれを温められる。

p123。食は精神にも影響するので栄養素がすべてではない…。

 

甘いのが好きとか苦手とか、~(中略)~、おいしいおいしいって言い合う、あれがすごく、しんどかったんだなって、分かって。

p142。なるほどねぇ…確かに、他の趣味とかと違って食って謎の神聖視があるよね。私はたとえそうでなくても美味しめちゃえば勝ちだと思ってるけど。

 

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純文学は感想を書くのが難しすぎます…。

とにかく感情を揺さぶられる印象的な作品でした。