ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

どやんすどやんすー!?

先日、九州に出張に行く機会がありました。

 

コロナ情勢がやや不安な中でしたが、滅多にない出張なのと、あと佐賀県大分県への宿泊で47都道府県コンプという状況だったので、出張後に旅に出ました。

 

佐賀県といって思いつくのが「ゾンビランドサガ」しか無かったので、とりあえずコッコ君さんには挨拶に行きたいなと思いました。

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出張までに一通り見返したのですが、やっぱり5話の「つちぃ…つちぃ……」で分かっていても爆笑したし、リリィ回で泣きました。いい作品ですよ、本当に。

 

はい。では聖地巡礼した記録です。平日だったのと、レンタカー借りて回ったので、密とは無縁の旅で安心安全のサガでした!!!

 

唐津市歴史民俗資料館(旧三菱合資会社唐津支店本館)

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ここは皆が暮らしている屋敷ですね。絶賛工事中のようでしたが、逆にそのおかげでそれっぽい雰囲気が出てました。休館中なのは知ってました。

 

地元のおばさんがいらっしゃって、私はまだ何も言ってないのに「どうぞゆっくり見ていってくださいね〜、みなさん来ていただけるから、早く開けないとダメですね〜」と。

 

目的が完全にバレてますね。休館中なのに見に来るオタクが多いんでしょう。

 

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アルピノ

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最後のライブステージ。ステージ会場部分は本当の工事中らしく、立ち入りできませんでした。中庭の印象が強く残っていたので、「おぉ…本物だ…」と言ってしまいました。

 

唐津駅

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ゲリラライブ会場。ここも印象的でよく覚えてます。

 

④鏡山展望台

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サキ回の時の決闘場所ですね。ここは、実際とは若干構造が違うようです。駐車場から直接崖っぽい感じにはなってなかった。

 

サキ好きなんですよねー。あとサキは関係ないけど赤朽葉家の伝説を思い出す…製鉄天使買ったので、こんど読みます。

 

ドライブイン

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チワーーーーーース!!

看板で無駄にテンション上がりました。一番定食、美味しかったです。鳥がウメェの。特に焼鳥が。

 

 

はい。以上です。聖地巡礼とかほぼやらないので、新鮮で楽しかったです。

 

これで47都道府県の全てで宿泊以上の経験を積むこともできて、私の目標の一つが達成されました。私は変わらず日本が好きなので、これからも日本を旅していきたいなと思います。

麦チョコなつかしい

こんなに読書好きを公言しておきながら、実はこれまで芥川賞作品を読んだことがありませんでした。

 

芥川賞って、なんだか難しい作品が多そうなんだよな…というのが主な理由です。食わず嫌いですね。

 

ただ、純文学に対する偏見を見直せる機会があって、一度読んでみようか、と思って手に取ったのが長嶋有さんの「猛スピードで母は」です。

 

…やばい、書くのをさぼっていたので細かいことを忘れかけています。

 

どちらのお話も複雑な家庭事情のなかにある子ども目線のお話なんですけど、子どもらしい純粋な感受性で語られるそれは不思議と重くなく、不思議な読後感でした。

 

人間性って、もちろん環境に影響を受ける部分はあるけど、やっぱり先天的なものもあって、同じ境遇でもそれがプラスになる人、マイナスになる人、それぞれだなぁと感じました。

 

芥川賞、今後も積極的に読もうとは思いませんが、気になったものについては敬遠せず読んでいきたいです。

 

以下、ネタバレを含む詳細です。

 

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サイドカーに犬

洋子さんかっこいい。母親と洋子さんの違いに驚くような描写は、流浪の月の描写にも少し似ている。良くも悪くも、親の考える「普通」が子の「普通」の形成に多大な影響を与えるよね。「普通」が親から引き継いだそのままで固まってしまう前に、別の「普通」に気づくことが大事。

 

洋子さんとの夜の散歩も印象的。この不思議な雰囲気は何なんだろうな…。彼女らが淡々と、でも一生懸命生きているのを、そのまま写し取ってるみたいな。

 

【猛スピードで母は】

母親から「結婚するかもしれないから」と言われた際の「すごいね」という返しは、すごい(語彙力)。子どもの感受性でしかなしえない返しだと思う。母が帰ってこない時の心の動きの描写も、すごかった(語彙力)。

 

一番印象的だったのは、ゴールキーパーの比喩。PKの時に、すべての球を阻止することに拘っていては、なにもできないのです。止められなかった時は止められなかったことを素直に受け入れる、そう生きていきたいなと思いました。これは個人差が大きいと思いますけどね。

「俺たちは──バーバリアン・スキル!』

『バーバリアン・スキルには、観劇する際のお約束があります!まず一つ!おもしろかったら、笑って下さい。二つ!悲しかったら、泣いて下さい。三つ!つまらなかったら、怒って下さい。』

竹宮ゆゆこ氏の「いいからしばらく黙ってろ!」を読みました。

 

キャッチーなタイトルから予見されるように、まさしくエンタメ100%、面白さ100%って感じでしたね。圧倒的なキャラクター小説でした。

 

登場人物が濃すぎるし、その会話劇はノリとテンションだけで突っ走っている。それで面白くなるのが、さすが竹宮さんです。

 

全体の話としても、富士の成長物語?として、一本筋があるおかげでスッキリしている印象です。ただ、脱線しまくるのでテンポは遅いですねw(会話のテンポは早い)

 

ラノベチックな小説でも楽しむことができる方に、オススメです。メタファーも少なめで、分かりやすく楽しめます!

 

以下、ネタバレを含む感想です。

 

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せっかくキャラが濃いのでキャラごとの感想にしようかな。

 

【須藤】

圧倒的メインキャラ感を出しておいてサブキャラでした。でも富士を演劇の世界へ引きずり込むキッカケを作った重要人物。オネェが入ってると思う。

『ていうかそれならとっとと底まで落ちてきてよ、一緒にこの地獄で一番かっこいい鬼探さなきゃ!地獄だろうがなんだろうが、一緒なら全然楽しいでしょ!』

 

【小松】

この人、まともなようでいて一番ヤバい人なんじゃないかと思ってます。最期に演劇に感動してたのは彼なのかな?言動は基本的にイケメンのそれ。

『あなたの舟を、いつか一緒に探しに行きましょう。二人でなら、生き返らせることもできるかもしれない』

 

【蟹江】

富士に好意を抱いているのは序盤からなんとなく察してました。富士を引き入れた張本人。一番の常識人のフリして他人のキャッシュカードを切り刻む犯罪者。メンバーの中では一番保守派かな?

『今、ンフ、僕、なにげに呼び方変えたんだけど、気付いたかな……!? ふっひっひ!』

 

【南野】

濃すぎる。赤だしか!

……。ナルシストでバカで、でも真っ直ぐなバカです。ちっとも本題が進まないのは彼のせいです。抜け毛のペットは飼いたくないです。

『黄金だ!それでいてあえかなる天上の虹!輝きはまさしくダイヤモンド!そしてビッグバン!BOOOOOON!わかるか!?』

 

【南野の兄】

ただのイケメンパン屋。

 

【蘭】

完全に言動からのイメージですが、ちっこいツンデレ気味な暴力先輩みたいな印象です。……濃いなぁ〜〜。

でも演劇に対しては人一倍真面目なんですよね。そこが好きです。最期の不敵な笑みからの大也を代役へ投げ込むのは、スポ根的な感動がありました。

『──やっちゃえ』

 

【大也】

あれ?大也なんて人いましたっけ?

それは冗談ですけど、案外本当なんですよね…。彼も演劇に対しては真面目で、だけど印象に残っているのは最期に急にイケメン化したことだけです(笑)

『龍岡さんも俺の方を見て『はいどうもー』みたいな感じ出してきてたじゃないすか』

 

【ミノタ】

この人はマジでなんだったんだ……。

 

【樋尾】

仲間を集めていくフェーズでのラスボス。彼もやっぱり演劇が好きなんだと思うけど、最期の電撃移籍は意図が汲み取れなかったなぁ。バーバリアン・スキルは富士に任せられると思ったのだろうけど。

『……ここにはもう龍岡がいるんだな』

 

【富士】

主人公。卒業式の夜に運命を感じた糸を辿っていき、とんでもない所まで来てしまいましたね。

ラスボスの樋尾を突破し、そのままハッピーエンドへ、とならなかったのが、さすが竹宮ゆゆこ…!という感じ。

序盤から登場していた舟というメタファーを交えながら、自分でなくてはならない意味があるのか、について考えてしまう富士。序盤は周りに半分巻き込まれる形で進んでいたので、自信が持てなかったのでしょう。ただ、振り返ってみて何度も自分の手で掴み取ってきた未来であることを自覚し、手放すもんか!と吹っ切れる力強さはすごいです。

能動的選択の力強さです。そういう意味では、「やがて君になる」の侑と似てるかもしれない。

最初の居酒屋トイレシーンがラストとリンクしているの、めちゃくちゃステキ。真面目に考察すると色々アレだと思うけど、とにかくステキ。

──見つけた。

私もやっと、私を見つけた。

あの夜に駆け出した魂は、今もここで、爆発しそうに跳ねている。

 

【まとめ】

終始笑いながら読み進めることができました。こういう極振りの話でも、竹宮ゆゆこらしさがあり、ちゃんと面白くなるのがすごいです。

 

最期には華麗なタイトル回収。富士の成長も示唆していて素晴らしいです。

 

俺たたエンドで、続編とか考えてるのかな…?って思ったけど、インタビュー記事では否定的でした。

 

富士がこれからも、あの子とともに魂を燃やして、海を目指していけますように。

『俺たちにはこいつがいる──。いでよ富士!なんとかしろ!』

隕石が落ちてみんな死ぬ話

凪良ゆうさんの新刊「滅びの前のシャングリラ」を読みました。

 

感想は正直、今は一言ではまとめられません。今まで倫理観は不可侵領域だと思ってたんですけど、倫理観までぶっ壊しにかかってくる化け物でした。(誤解のないようにいうと、とても読んで良かったと思ってます)

 

1ヶ月後に、隕石が落ちてきて人類はみな死ぬ。その時にどうするか、誰しも一度は考えたことがあるでしょう。なるべく最後まで普段通りの生活を、と安易に思っていた自分が恥ずかしくなります。そこまで社会は堅牢ではないどころか、脆すぎる仕組みなのでした。

 

現在のコロナ情勢や、震災時の混乱などにも通ずるところがあり、本来ぶっ飛んだ設定なのにとても身近に感じてしまいました。

 

どなたかの書評で見かけた表現ですが、「人はきれいごとだけでは生きられないけど、きれいごともなければ、生きられないのだ。」これが本作をある程度よく言い表しているように現状では感じています。

 

場合によっては危険思想に繋がる恐れがあることを自覚した上で言うと、人間が現在ある程度共通で持っている倫理観って、社会制度や教育の影響で洗脳(良い洗脳)をされている賜物なんですよね。だから、人を殺してはいけないし、人を殺しても多くの人は罪の意識を持つ。一方、アリを積極的に殺すことはなかったとしても、殺しても罪の意識はもたない人が多い。

 

ただ、それってあくまで洗脳なんですよね。人間本来に備わってるものではないと思います。だから、時代によって社会制度が変われば倫理観も変わるし、社会制度が崩壊していけば、個人差はあれど洗脳がとけていってしまう。なんかヴァイオレット・エヴァーガーデンの戦争の話を思い出すな…。

 

何が言いたいかと言うと、緊急時において、倫理観は役に立たないバッドエンドな世の中なのだろう、ということです(役に立たせるべきではないともいえる)。緊急時にみんなが紳士的な振る舞いをする未来にはなりえない。人はきれいごとだけでは生きていけない。これは、彩瀬さんの東日本大震災ルポルタージュを読んだ時にも思ったことです。性善説の否定になるのかもしれないけど、性善説のことをよく知らないから勉強します。

 

え?そんな後ろ向きな結論?となる所ですが、そうではないと思ってます。そんなバッドエンドな世の中自体をハッピーエンドにすることはできなくても、自分の人生を幸福にすることはできると思うのです。その力の源が、きれいごとだと思うのです。

 

宗教的だとか言われそうな気がしますが、結局は精神的に幸福でありさえすればいいと思ってます。そして、精神的幸福はきれいごと(希望的祈り)によって支えられている、そう思うわけです。

 

なんか上手く伝わることはないように思いますので、ここまでにしときます(笑)

 

とにかく本作からは、そういうことを感じ取りました。曲解かもしれないけど。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

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【シャングリラ】

高校生男子の友樹の話です。凪良さんの作品において、これまで男性が語り口のものって少なかったけど、とても自然な語り口で安心しました(よく考えれば、BL描かれている方だからむしろこっちが得意なのか?)。あんまり性差を気にしてないように見受けられるので、そのおかげかも。

 

それにしても友樹を送り出すお母さん(静香)がカッコよすぎ。惚れるわ。

 

それにしても雪絵の両親は妹の名前つけるのなんとかならなかったのか…ここは理解に苦しむが、私も親になれば分かるのだろうか。

 

殺される際になって、完全に自己を確立する友樹。「弱い羊のままのぼくで荒野を駆ける。」この決意が、ステキでした。

 

パーフェクトワールド

隕石の話が出る前から半分死んでいた信士。序盤のあまりの報われなさ・虚しさに悲しくなってくる…。

 

役所で息子の受験の心配しているくだり、客観的立場から見れば完全にとち狂ってるけど、本当に隕石が落ちてくる状況であればとち狂うのがある意味自然な挙動だし、実際にこういう人多くなりそうで妙に現実的だった。

 

そして静香との再会…。苗字を見れば1話と繋がってるのがすぐわかるんだけど、友樹との電話までまるでわかんなかった。

 

なんと言っても、病院での抗争シーンがやばすぎる。なんとなくわかってたけど、「お、お父さん、がんばれー……」はズルい、ズルすぎる(笑)

 

隕石が落ちてくるおかげで、信士は生まれてきた歓びをかみしめることができた、パーフェクトワールドになった、そういうことですね。

 

【エルドラド】

静香の話です。友樹を身ごもって信士の元から去るというのは、正解でもあり、不正解でもあった、という話だったと感じました。

 

そして、今回の話の大きなテーマの一つである、正義か悪かの話。花屋のおばさんの話は本当にゾッとしました。ここに切り込んでくるかぁ、と。もちろんこんなに極端な話ではなくても言えることだと思います。自分の正義によって断罪される悪があるけど、その悪は正義でもあるということ。これを背負っていく覚悟が必要ですね。

 

「なんか最近のお母さん、『お母さん』みたいだね」には泣いた。静香にとっては、人生のIFストーリーを歩んでいるような気分なんだろうか。それはそれで辛いけど、それはそれで幸せだ。

 

【いまわのきわ】

本作を象徴するような祈りの物語。自分で決めたこと・人から言われたことの差の大きさを感じました。

 

私は「言われたこと」に対しても幸せを感じることができる人間だと思ってて、それを長所だと思ってたけど、こういう破滅の道もあるのだなと、少し恐ろしくなりました。楽しんでるだけで、実は幸せは感じていないのだろうか…。このあたり、もう少し読み解きたいな。

 

ポチからの電話を受けてから、祈りの物語が始まる。自分がやりたいと感じていることをやる。その力強さで生きていける。人類滅亡の瞬間に人が抱くのは、希望なのかもしれない。

 

「ただ、命を謳うのだ。」をはじめ、圧倒的バッドエンドが近づいているのにどんどん幸せになっていく。最後は静かな感動の中にいました。

 

【イスパハン】

雪絵の話、きましたね…。

 

「あっち側に、もうひとりのわたしがいればいいな。」叶わない未来を別の世界線として存在することを願う、矛盾しながらもどちらの自分も認めていく、そういう昇華の方法もあるんだな、と思いました。

 

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隕石が落ちてみんな死ぬ話なんだけど、実は人類誕生の物語でもある。表紙に赤ん坊が描かれてる理由も、うまく言語化できないけど、なんとなく分かってきました。

 

また読みます。

コボちゃんを鳥山が描いている世界線を目指して

「あなたはここで、息ができるの?」を読みました。

 

いやぁ、最高に"竹宮ゆゆこ"でした!竹宮ゆゆこさんの魅力は一つ前の記事にまとめましたが、本作はまさしくと言った感じでした。

 

時間ループものと帯に書いてあって、怒涛のメタファーに時間ループまで足された日には理解できるのか…?と一抹の不安がありましたが、今回はかなりの親切設計でした。

 

メタファーについてもかなり丁寧にネタバラシというか、明言されていて分かりやすかったです。しかも、生粋の竹宮ゆゆこオタクが満足するように、説明がくどい所は飛ばせるようになっているというね(笑)(たぶんそういう解釈でいいんだと思う)

 

まだ竹宮ゆゆこ作品を全部読んだわけじゃないですが、これが入門としてはオススメな気がしました…。これがハマれば、自動的に他の作品もハマるような、気がします。

 

以下、ネタバレ含みます。

 

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冒頭から主人公がグロレベルで死にかけていて、すでにジェットコースター展開wこういうときは、理解は2周目に回すのが賢いですね。「みんな」という表現も、2周目だと少しジーンとくる。

 

そして最大の特徴、QとX。この置き換えのおかげで話がだいぶ分かりやすくなってました。「砕け散る〜」とかは、このQとXがないレベルに匹敵する難解さだったので、だいぶ親切設計だな、と思いました。あと※で飛ばすやつ。特に最後の方の※は「メタファーの意味が分かってる人にとってはくどい説明になるから飛ばしてね〜」って意味だと受けとりました(笑)

 

時間ループものだけど、QとXがあるおかげもあって、繰り返し描写はほとんどなく、スムーズに楽しめました。

 

宇宙人の正体と意図も、台詞から大体推測できました。ただ、途中でお母さんというミスリードがあったり、厳密には邏々自身でもあったりして、やっぱり初手では把握しきれませんねw

 

さて、話の中身の話ですけど、謳い文句通り、最強の恋愛小説でした。自分が居ない未来を選ばせようと何度も何度も時間ループを決行する健吾。何度でも健吾と共にある未来を選ぶ邏々。読者にとっては想像の領域でしかないけれど、時間をループするたびに邏々の想いはより一段と強まっていってしまう。

 

息の話は深いですね。一緒に居ないと息もできないという暗喩的表現と、交通事故で瀕死状態にあるが故の、意味通りの息というのと、色々と繋がっていて凄いです。宇宙人版健吾のマスクというのは恐らく現実世界でついている病院のマスクのことで。青い姿なのも病院の青い布のせいで。

 

結局は邏々は亡くなり、健吾は一命を取り留める。そして、健吾が家に帰ってきた時にみた夢に邏々が干渉し、語りかけているものが、本作品。という解釈でたぶんあってるはず。

 

圧倒的バッドエンドなんだけど、邏々の想いの強さ、力強さが印象的で、悲しみの涙ではなく感動の涙が流れました。

残された健吾や両親のことを考えるとしんどすぎるけどね。

 

自分の竹宮ゆゆこ力向上を実感でき、竹宮ゆゆこ作品をもっと読みたいと思いました。

 

【もう一回読むときに確認したいこと】

・「邏々」と「ララ」の使い分け

・宇宙人版健吾の心情変化

・Q→Xの流れのより正確な解釈

 

ジャンル「竹宮ゆゆこ」について

「あなたはここで、息ができるの?」の感想を書こうと思ったのですが、竹宮ゆゆこオタクすぎて、竹宮ゆゆこさんにまつわる話だけでボリューミーになってしまったので、分けます。

 

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中学生の頃、周囲の友達が所謂オタク文化(アニメ・マンガ・ラノベ)に染まりだしました。はじめは反射的に、私は触れてはいけない領域だと思って目を瞑っていました。淡い記憶では、これらは不真面目の権化のように感じていたのかな。食わず嫌いともいいます。

 

ただ、当然友達との会話にはついていけなくなり(幸いなことに、だからといって気まずくなったり、はぶかれるような友達ではありませんでしたが)、またその頃から小説を読むのは好きだったため、恐る恐るラノベに手を出しました。そこで出会ったのが「とらドラ!」です。

 

当時の自分にはとんでもない衝撃でした。こんなに面白いものがあるんだ、と。これまで偏見ガチガチだった自分を恥じ、ジャンルを問わずまだ自分が面白く感じれることっていっぱいあるんだなという気づきでした。

 

つまり、今から考えれば、私の価値観を変えた作品になりますね。「なるべくたくさんのことを楽しめる人間になる」という現在の価値観へのスタート地点でした。

 

大学生になって、本屋で偶然「竹宮ゆゆこ」の文字を見たときはビックリしました。「知らない映画のサントラを聴く」ですね。

 

竹宮ゆゆこさんは、現在は一般文芸に近い立ち位置で作品を書かれています。まぁ、ラノベかそうでないかにたいした違いや意味はなくて、いうなればジャンル「竹宮ゆゆこ」といった感じです。

 

ジャンル「竹宮ゆゆこ」は、かなりクセが強いので、好きな人はとことん好き、楽しめない人はとことん楽しめない、そんなジャンルだと思います。

 

こんなに書いておいて、まだ既刊の半分くらいしか読んでないニワカですが、私が考える魅力(竹宮ゆゆこ節)を3つほど紹介します。

 

①怒涛のメタファー

メタファーがめちゃくちゃ多いです。初読はだいたい何をいってるかわからない、もしくは何が起こっているのかすらわからない、怒涛のジェットコースター展開があるのがデフォです。

かつ、序盤でメタファーの意味を匂わせてるのは大体ミスリードなので、それで固定化して考えちゃうとこんがらがります。メタファーに対しては最後まで柔軟な気持ちを持つことが重要です。

このせいで「ジェットコースターから振り落とされた気分」「難しかった」という感想になる方がいるのだと思います。でもですね、これを楽しめるかどうかが一番のキモなんですよ。竹宮ゆゆこ氏と限りなくシンクロして、何度も読んでいくと、文章が変わったわけじゃないのに、読むたびに印象がめちゃくちゃ変わるんですよ。初読でスルーした所で泣いてしまう、そんな感じです。 

 

②タイトル

タイトルもクセが結構強いです。「知らない映画のサントラを聴く」や「砕け散るところを見せてあげる」、「あなたはここで、息ができるの?」などなど。

これも、読了後に想いをはせるとジーンとくるやつばかりです。つまりメタファー、なんですよねw

 

③非常に砕けた一人称語り

大体が主人公の一人称語りで、主人公が大体女の子で、めちゃくちゃ砕けた文章体で描かれてます。これはラノベ時代の名残り?なのでしょうかね。

この砕け具合に辟易してしまう人もいるんだろうな〜とは思います。

 

続いて、オススメの作品ですが、まだ既刊を読み終えてないので、細かいことはやめときます。ただ、「砕け散るところを見せてあげる」が私にとっての聖典です。メタファーが特に際立っている作品ですが、解釈できたときの感動と言ったら、最高です。「あなたはここで、息ができるの?」は比較的親切設計だったので、竹宮ゆゆこ入門としては良さげかもしれません。

 

現在、手元には「いいからしばらく黙ってろ!」があります。とても楽しみですが、まだ「あなたはここで、息ができるの?」の余韻を楽しみたいかな。でも近々読んじゃいそうです。

永遠なれ

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の映画を観ました。

 

最近涙腺はゆるゆるなんですけど、それにしてもマスクがぐちょぐちょになりました。外伝を含めて、映画館で泣いた唯一の作品です。「泣ける=良い」ではないと思っているので、この表現を感想とするのは不服なのですが、語彙力がないので。

 

テレビシリーズから長きに渡って、ヴァイオレットの人生を描ききってくださったことに、感謝です。この作品がこれからも色あせることなく受け継がれ、永遠のものとなりますように。

 

今回、テレビシリーズから全て一度見返しました。その感想も含めて、以下にネタバレありで書いていきます。

 

 

 

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【テレビシリーズ】

これを見返すためだけにNetflixに加入。初回1ヶ月だけ安かったのと、まさかの外伝も配信してくれるということで、よかったです。

 

最近のヴァイオレットに慣れていたので、序盤のヴァイオレットの感情の無理解さには懐かしさを覚えました。

 

けれど、理解できていないだけで、少佐に対する想いなど、感情自体は序盤の時点で確かに心の中にあるのだということを感じました。少佐との生活の中で、武器ではなくきちんと人間になれている。

 

それにしても、毎話毎話泣かせにくるずるい構成ですよね…それでも素直に感動できるのは、やっぱり、登場人物一人一人の息遣いが感じられるからだと思います。

 

軸となるヴァイオレットは、こなした仕事・出会った人々の影響を受けて、少しずつ着実に変化している。各話のメインキャラたちも、ちゃんと生きていて、その話限りの登場だったとしても、彼彼女らの「これまで」と「これから」までをも感じることができる。これって当たり前じゃなくて、凄いことだと思います。

 

お気に入りを挙げることができないほど、どの話も好きです。本当に、それだけで1つの物語足り得るほどの世界観というか。一番泣いた話であれば、10話(アンへの手紙)です。自分でも声出して泣くとは思わんかったです。

 

見返した時に印象的だったというか、ようやく理解できたことは、ディートフリートの弟愛です。

 

初見の時は、前半の印象はかなり悪く、終盤でもそれを引きずってみてしまっていました。ただ、見返した時に、終盤の展開を知っている上で序盤からの行動を見返すと、彼なりの「あいしてる」が確かにあったのだなぁと感じることができました。

 

弟のギルベルトは、真面目で優しい性格であるがゆえに、戦場でも損な役回りを任され、命を落としかねないのではないか。そう危惧したからこそ、武器としてのヴァイオレットを傍に置かせようとしたのではないかな…と思ってしまいました。

 

【テレビ未放送話】

この存在を初めて知りました。円盤とかに付いていたものなんでしょうかね。気づけて良かったです。

 

時系列は確実にはわかりませんが、公開恋文の前っぽいですよね。

 

テレビシリーズを見返した時に、公開恋文のタイミングでヴァイオレットの表現力・感情力?が格段にレベルアップしてて笑っちゃったのですが、それを補完する役割を担っていそうな気がしました。

 

映画の冒頭で海の讃歌を歌ってたのはイルマかな?と思いました。

 

映画も観終わった後で振り返ってみれば、ギルベルトが本当に死亡していた場合のIFストーリーを模しているようにも思いました。

 

【外伝】

これは映画館でめちゃくちゃ泣いた初めての映画です。

 

呼び名に想いが込められるような描写が、個人的に大好物なんです。今回のように、同じ時を過ごしたかつての名前であったり、初めて「お母さん」と呼ぶとか、そういう。

 

改めてみると、エイミーとテイラーの対比が細かくて最高でした。ヴァイオレットにありがとうを伝える描写も、よく似ていて姉妹らしいと思いました。

 

最期の手紙は思い出しただけでも…。テレビシリーズのルクリアの時も思いましたが、短文で想いを伝えるタイプにめっぽう弱いのだと思います。

 

電波塔のくだりなど、段々と戦争が過去のものになっていくような、時の流れが感じられる部分もありました。

 

【映画】

さて、ようやく今回の映画です。運良くお休みだったので、舞台挨拶のライブビューイングがある回で観ることができました。

 

冒頭にアンの話を持ってくるのはずるすぎます…ずるすぎますよ…。

 

手紙が飛んでいく演出は、どこかで一度ありましたね。外伝だったかな?そことの対比になっていそうでした。

 

電波塔も完成したということで、外伝からもさらに少し先の話ですね。

 

ヴァイオレットは非常に感情豊かになったと思います。ギルベルトの話題になった時のあの顔の描写は少女らしさが際立っていて、とても良かったです。かと思えば、ユリスとのやり取りやユリスの危篤の連絡のくだりなど、ギルベルトから独立したヴァイオレットとしての強かさが際立つ場面も多くありました。また、感情が理解できるようになったからこそ、ギルベルトが会いたくないと言っている気持ちを理解してしまうのは切ない所だと思いました…以前の彼女なら、問答無用で扉を開けていたような気がします。総じて、彼女の成長を感じられました。

 

ギルベルトの想いも、分からんではないけど、どうするべき、ではなくて、どうしたい、という今の自分にとっての幸せを第一にして欲しいと思いました。だから、最後にちゃんと素直になれてよかった…。

 

ディートフリートは、舞台挨拶で浪川さんが言ってましたが、好感度が急上昇キャラでした(笑)。テレビシリーズを見返した時に感じた彼の想いが、解釈違いでなかったことが確認できて、よかったです。弟が「〜であるべき」から自由になる後押しをした、弟を溺愛している兄貴でした。

 

また、来場者特典がIFの小説でした。ヴァイオレットがギルベルトに渡らずにディートフリートの傍に居続けた場合のお話だったのですが、これが結構なバケモノでした…。ディートフリート、お前ってやつは…。小説としての魅力も十分に伝わってきたので、落ち着いたら原作も読みたいと思いました。

 

未来のデイジーの「あいしてる」の手紙で終わっていく流れも良かったです。

 

自動手記人形や手紙が廃れていっても、「あいしてる」は変わらないし、言わなければ伝わらないことは多いのです。電話でも、手紙でも、なんでもいい。大切な人へ伝えたいことは伝えたいと思ったら、伝えたほうがよい、そう思いました。

 

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この作品は、これから先も多くの人が観て、永遠のものとなって欲しい、そう思います。