『バーバリアン・スキルには、観劇する際のお約束があります!まず一つ!おもしろかったら、笑って下さい。二つ!悲しかったら、泣いて下さい。三つ!つまらなかったら、怒って下さい。』
キャッチーなタイトルから予見されるように、まさしくエンタメ100%、面白さ100%って感じでしたね。圧倒的なキャラクター小説でした。
登場人物が濃すぎるし、その会話劇はノリとテンションだけで突っ走っている。それで面白くなるのが、さすが竹宮さんです。
全体の話としても、富士の成長物語?として、一本筋があるおかげでスッキリしている印象です。ただ、脱線しまくるのでテンポは遅いですねw(会話のテンポは早い)
ラノベチックな小説でも楽しむことができる方に、オススメです。メタファーも少なめで、分かりやすく楽しめます!
以下、ネタバレを含む感想です。
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せっかくキャラが濃いのでキャラごとの感想にしようかな。
【須藤】
圧倒的メインキャラ感を出しておいてサブキャラでした。でも富士を演劇の世界へ引きずり込むキッカケを作った重要人物。オネェが入ってると思う。
『ていうかそれならとっとと底まで落ちてきてよ、一緒にこの地獄で一番かっこいい鬼探さなきゃ!地獄だろうがなんだろうが、一緒なら全然楽しいでしょ!』
【小松】
この人、まともなようでいて一番ヤバい人なんじゃないかと思ってます。最期に演劇に感動してたのは彼なのかな?言動は基本的にイケメンのそれ。
『あなたの舟を、いつか一緒に探しに行きましょう。二人でなら、生き返らせることもできるかもしれない』
【蟹江】
富士に好意を抱いているのは序盤からなんとなく察してました。富士を引き入れた張本人。一番の常識人のフリして他人のキャッシュカードを切り刻む犯罪者。メンバーの中では一番保守派かな?
『今、ンフ、僕、なにげに呼び方変えたんだけど、気付いたかな……!? ふっひっひ!』
【南野】
濃すぎる。赤だしか!
……。ナルシストでバカで、でも真っ直ぐなバカです。ちっとも本題が進まないのは彼のせいです。抜け毛のペットは飼いたくないです。
『黄金だ!それでいてあえかなる天上の虹!輝きはまさしくダイヤモンド!そしてビッグバン!BOOOOOON!わかるか!?』
【南野の兄】
ただのイケメンパン屋。
【蘭】
完全に言動からのイメージですが、ちっこいツンデレ気味な暴力先輩みたいな印象です。……濃いなぁ〜〜。
でも演劇に対しては人一倍真面目なんですよね。そこが好きです。最期の不敵な笑みからの大也を代役へ投げ込むのは、スポ根的な感動がありました。
『──やっちゃえ』
【大也】
あれ?大也なんて人いましたっけ?
それは冗談ですけど、案外本当なんですよね…。彼も演劇に対しては真面目で、だけど印象に残っているのは最期に急にイケメン化したことだけです(笑)
『龍岡さんも俺の方を見て『はいどうもー』みたいな感じ出してきてたじゃないすか』
【ミノタ】
この人はマジでなんだったんだ……。
【樋尾】
仲間を集めていくフェーズでのラスボス。彼もやっぱり演劇が好きなんだと思うけど、最期の電撃移籍は意図が汲み取れなかったなぁ。バーバリアン・スキルは富士に任せられると思ったのだろうけど。
『……ここにはもう龍岡がいるんだな』
【富士】
主人公。卒業式の夜に運命を感じた糸を辿っていき、とんでもない所まで来てしまいましたね。
ラスボスの樋尾を突破し、そのままハッピーエンドへ、とならなかったのが、さすが竹宮ゆゆこ…!という感じ。
序盤から登場していた舟というメタファーを交えながら、自分でなくてはならない意味があるのか、について考えてしまう富士。序盤は周りに半分巻き込まれる形で進んでいたので、自信が持てなかったのでしょう。ただ、振り返ってみて何度も自分の手で掴み取ってきた未来であることを自覚し、手放すもんか!と吹っ切れる力強さはすごいです。
能動的選択の力強さです。そういう意味では、「やがて君になる」の侑と似てるかもしれない。
最初の居酒屋トイレシーンがラストとリンクしているの、めちゃくちゃステキ。真面目に考察すると色々アレだと思うけど、とにかくステキ。
──見つけた。
私もやっと、私を見つけた。
あの夜に駆け出した魂は、今もここで、爆発しそうに跳ねている。
【まとめ】
終始笑いながら読み進めることができました。こういう極振りの話でも、竹宮ゆゆこらしさがあり、ちゃんと面白くなるのがすごいです。
最期には華麗なタイトル回収。富士の成長も示唆していて素晴らしいです。
俺たたエンドで、続編とか考えてるのかな…?って思ったけど、インタビュー記事では否定的でした。
富士がこれからも、あの子とともに魂を燃やして、海を目指していけますように。
『俺たちにはこいつがいる──。いでよ富士!なんとかしろ!』