青山美智子さんの「お探し物は図書室まで」を読みました。本屋大賞ノミネート作品6作目です。
青山さんとは初対面でした。あらすじからワクワクしていましたが、本当に久々に、"元気"をもらう作品を読みました。
いや、最近読んでたのが全部バッドエンドだとかそういうことではなくて、読むのにMPを消費するタイプの作品が多かったのです(伝わります?)。この作品には、回復魔法をかけてもらった気分です。
これまで読んだ本屋大賞ノミネート作品6作の中で、「滅びの前のシャングリラ※」を除くと、一番良かったし、書店員も好きそうだなと思いました。個人的印象ですけどね。
※凪良さんは神格化しすぎて客観的評価ができないので、わかりません。
働き始めて、落ち着いてきた今だから刺さるのかなぁという部分もあって、「仕事」と「人生」と、っていうテーマだったと思います。仕事が全てではないけれど、人生において無視できない(お金をもらう手段と割り切ることのできない)ものだと思っていて、だから人生における仕事の居場所探しをはじめ、色んな悩みの種になるんですよね。こういった悩みや不安によって消費された体力を、回復してもらえました。
あと何より、小町さんの魅力ですね。図書館ではなく"図書室"、そして司書という立場のおかげで、小町さんのミステリアスさが浮かずに、物語のメインスパイスになってます。
こういう導きタイプの物語の場合、導き手の立場が身近すぎる存在だと、導きという行為の超能力性に目がいってしまいがちなんですよね。ただ、今回の図書室の司書だったり、円紫さんシリーズの円紫さんの落語家だったり、多くの人にとって謎多き立場の設定であることで、うまく馴染むというか。
では、短編ごとにネタバレありで。
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【1章】
沼内さんみたいになりたい。怒るときはしっかり怒れて、でも目的を見失うことなく、全力でフォローできる。
これからは本当に…。
自分で自分を、ちゃんと食わせる。
朋香が入社1年目ということで、私もまだまだ身近な経験だったので、所々刺さりました。どんな仕事も、考え方ひとつで、自分がどう取り組むか、なんですよね。
【2章】
比奈ちゃんが良きパートナーすぎる…。
…………一緒に。「手伝う」じゃなくて、「一緒に」。
これ言われるのが一番嬉しいですわ。
そして、世界は信用で回っているというのは、今のところ私もその通りだと思ってる。
「時間がない」なんて言い訳はもうよそうと僕は思った。「ある時間」で、できることを考えていくんだ。
これが一番刺さったかもしれません。
【3章】
「月のとびら」が読みたくなるいい販促だと思いました(違うし失礼)。今度買います。
みづえ先生みたいになりたい。思い通りにいかないことをこそ楽しんで生きていきたい。逆行を耐えるのではなく、楽しみたい。
2つの目の話も印象的でした。論理的思考と感情的思考。
そして桐山くん!このゆるい繋がりがいいのよ…。
夏美が、読書体験を現実に落とし込んでワクワクしているのが、すこし自分に重なる。本との出会いはタイミングも大切で、良くも悪くも自分の現実の境遇に落とし込んじゃうんですよね。
【4章】
「でも、自分のやりたいことをやるのは自分なんだから、自分につきひとり、となれば、一分の一で、百パーセント」
小町さんとのぞみちゃんが他の章に比べて出番の多い回でした。小町さんのミステリアスさが魅力ではあるのだけれど、この2人の物語も覗いてみたいなぁ。
【5章】
今から定年後の心配をしてしまう笑。
依子も千恵も、本当に素敵な家族ですね。
そして海老川さん。ここであの骨董屋に繋がるとは!
「人と人が関わるのならそれはすべて社会だと思うんです。接点を持つことによって起こる何かが、過去でも未来でも」
この章はこれですね。いや、いい人生を送ってきたし、これからもいい人生を送れるよ、正雄。(何目線?)
最後に詩をよむのだろうなと思ったけど、いや最高の終わりかたですね。
【まとめ】
もうちょっと読んでいたいです。叶うならば小町さんとのぞみちゃんのお話を…!