北村薫さんの「円紫さんと私」シリーズ、とても好きなのですが、やや取っつきにくい所があるとすれば、落語や文学史よりの話が多い所だと思います。
円紫さんは言わずもがな落語家だし、「私」は大学で文学のことをやっているしで、そっちに話が行きがちです。全く知識がなくても楽しめる(事実、私は楽しめました)が、やはり取っつきにくさは出てしまうでしょう。
それを多少緩和させたのが、「中野のお父さん」ではないでしょうか。現代版円紫さんシリーズと言ってもいいかもしれないです。
出版社に勤める娘が持ってくる謎を、国語教師のお父さんが話を聞いただけで解決してしまう、この安楽椅子探偵っぷりは、円紫さんと全く同じです。
謎を堪能する余白がないと感じる人もいれば、爽快さを感じる人もいるかと思います。ただ言えるのは、この「中野のお父さん」を楽しめる人は、「円紫さんと私」シリーズも併せて読んだ方がいい、というアドバイスです。
以下、作品のネタバレを含みます。
個人的には、「夢の風車」と「冬の走者」がお気に入りです。「夢の風車」は、お父さんが謎を解く前に大体解けたので気分がいいことと、謎が単純に面白かったです。「冬の走者」は、丸山さんの全力サンタを想像したら中々面白かったです。
「闇の吉原」については、完全に円紫さんと私でも成立する内容でした…。ともかく、その延長線上でいつも通り楽しめたという感じでした。