ずっとお城で暮らしてる

趣味にまつわる記録簿です。小説の感想がほとんどです。

読書

ひとりだけど、ひとりぼっちじゃない

重めのお話ばっかり読んでると、たまには何も考えずに読める作品が欲しくなります。 半年ほど前、「森があふれる」の解釈でヘロヘロになってた時に、まさしく欲しくなりました。それでとある友人からオススメを頂いたのが「孤宿の人」です。 いや、宮部みゆ…

麦チョコなつかしい

こんなに読書好きを公言しておきながら、実はこれまで芥川賞作品を読んだことがありませんでした。 芥川賞って、なんだか難しい作品が多そうなんだよな…というのが主な理由です。食わず嫌いですね。 ただ、純文学に対する偏見を見直せる機会があって、一度読…

「俺たちは──バーバリアン・スキル!』

『バーバリアン・スキルには、観劇する際のお約束があります!まず一つ!おもしろかったら、笑って下さい。二つ!悲しかったら、泣いて下さい。三つ!つまらなかったら、怒って下さい。』 竹宮ゆゆこ氏の「いいからしばらく黙ってろ!」を読みました。 キャ…

隕石が落ちてみんな死ぬ話

凪良ゆうさんの新刊「滅びの前のシャングリラ」を読みました。 感想は正直、今は一言ではまとめられません。今まで倫理観は不可侵領域だと思ってたんですけど、倫理観までぶっ壊しにかかってくる化け物でした。(誤解のないようにいうと、とても読んで良かっ…

コボちゃんを鳥山が描いている世界線を目指して

「あなたはここで、息ができるの?」を読みました。 いやぁ、最高に"竹宮ゆゆこ"でした!竹宮ゆゆこさんの魅力は一つ前の記事にまとめましたが、本作はまさしくと言った感じでした。 時間ループものと帯に書いてあって、怒涛のメタファーに時間ループまで足…

ジャンル「竹宮ゆゆこ」について

「あなたはここで、息ができるの?」の感想を書こうと思ったのですが、竹宮ゆゆこオタクすぎて、竹宮ゆゆこさんにまつわる話だけでボリューミーになってしまったので、分けます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 中学生の頃、周囲の友達が所謂オ…

小説でしか聴けない音楽

恩田陸さんは結構有名な方だと思うけど、私の中では大変昔に「光の帝国 常野物語」を読んだきりの状態でした(もはや内容も完全に忘れ去られている)。 「蜜蜂と遠雷」は、直木賞・本屋大賞を獲った作品であるし、ピアノを弾いていた経験もあることから興味は…

文明が衰退した世界をゆく旅人

人ノ町は、完全に表紙買いです。小説を表紙買いしてもあんまりいいことないんですけどね…。 とはいえ、この人ノ町は、読んで良かったです。これをSFと呼んでいいのか分からないけど、SFを久々に読みました。 ミステリー要素もありながらだったので、段々と明…

おかねはだいじ。

「老後の資金がありません」は、いつどこで買ったかもよく覚えていないですが、恐らく1年くらい積読されていて、ようやく読むことができました。 前までは、原則買った順番に読んでいくことを自身に課していたのですが、それが読書欲を抑制してしまうことが…

「食べるってすごい。生きたくなっちゃう」

「まだ温かい鍋を抱いておやすみ」は、彩瀬まるさんの最新作です。 大きなテーマは、「食べるって、すごい」ことだと思います。ここ最近の深めで複雑なテーマを引き継ぐ部分はありつつも、食べるということから人間が得るエネルギーの偉大さで単純化していけ…

凪良ゆう 書店応援ペーパー

「流浪の月」が本屋大賞に選ばれたものの、このご時世で、本屋さんは休店が相次ぎました。そして緩やかに回復した頃、書店購入特典として番外編の配布がありました。凪良さんとしても思うところが多かったのだと思います。 凪良さんに関しては元々、出版社横…

「しみったれたSSサイズじゃあない、大きな大きなLLサイズだ」

「覆面作家の愛の歌」は、北村薫さんの覆面作家シリーズ、第2作です。 いやぁ、第1作に続いて非常に面白かったです。普通に事件性のあるものが題材となっていて日常の謎ではないですが、謎に対する細かい伏線にしてやられました。 そして何より登場人物の魅…

ゴキブリキューブ、ダメ。ゼッタイ。

森見登美彦さんのことは、知っているようで実はあまり知らないニワカです。アニメを観てから「四畳半神話大系」を読み、続いて「夜は短し歩けよ乙女」を映画化のだいぶ前に読み、「恋文の技術」を読んだ所で終わっています。 今回読んだ「太陽の塔」は、森見…

凪良ゆうのすすめ

私がいま最も夢中になっている小説家さん、凪良ゆうさんの作品の一つ、「流浪の月」が、なんと本屋大賞に選ばれました。 選ばれたのを知った瞬間、油断すると涙が出てきそうなくらい嬉しくて、自分でも引きました。家に帰って、凪良さんの受賞コメント動画を…

アバンギャルドな老人とゆとりセンシティブな若者、だけじゃないという話

「すみれ荘ファミリア」は、私にとって凪良さん4作目であり、現状の非BLとしては最後の作品です。 勿体ない気持ちが先行していてなかなか読まずにいましたが、「流浪の月」が見事に本屋大賞を受賞され、その勢い余って読んでしまいました。 おんぼろ下宿すみ…

城塚翡翠について

相沢沙呼さんとは、今回が初対面です。このミス1位を取ったというニュース、それから本屋大賞の候補にも選ばれたというニュースをみて、ミーハーだなぁと思いつつも、あまりの評判ぶりに気になって読んだのが、「medium 霊媒探偵城塚翡翠」です。 主人公で…

この世に触れたくて仕方がないからこそ、この世から逃げたくて仕方がない

「さいはての家」は、彩瀬まるさんの短編集で、5章からなります。 郊外に建つ古い借家でかりそめの暮らしをする様々な人々が主人公となっており、章毎に期間も異なるため直接的なかかわりはなく、ゆるーくつながっている感じですね。 帯での引用にある通り…

「妻がはつがしたんだ」

「森があふれる」は、「くちなし」に続いて、ものすごく幻想的な世界観のお話でした。 メインの主人公?である男性作家の妻である琉生はある日、植物の種を飲み発芽、広大な森と化します。 …だいぶファンタジーですね。その中で語られるのは、性差の話をベー…

「これこそがマカロンです」

「巴里マカロンの謎」は、驚くべきことに11年ぶりの小市民シリーズ最新刊です。 私は高校生の時に春期~秋期を読んだと思うので、11年丸々待ったわけではないですが、それにしても久しぶりである…このコンビのテンション感を忘れてしまう程度には。 時系…

もし円紫さんがお金持ちのご令嬢だったら

「覆面作家は二人いる」は、「円紫さんと私」シリーズや「中野のお父さん」と同様に日常の謎を扱う作品と分類することができますが、やや方向性が異なります。 まず第一に、殺人事件も扱うということ。主人公の双子の兄は警察官であり、主にはそこから流れて…

もし円紫さんが国語教師をやっているお父さんだったら

北村薫さんの「円紫さんと私」シリーズ、とても好きなのですが、やや取っつきにくい所があるとすれば、落語や文学史よりの話が多い所だと思います。 円紫さんは言わずもがな落語家だし、「私」は大学で文学のことをやっているしで、そっちに話が行きがちです…

正しさなんて、すててしまえ

「流浪の月」、「わたしの美しい庭」と読んできて、私の中で完全に急上昇ランク1位にいる凪良ゆうさん。 「流浪の月」を読んだとき、衝撃を受けたとともに、多少の後悔がありました。1作目にこんなに刺さる作品を読んでしまうと、どうしても2作目以降のハ…

やがて海へと届きました

「暗い夜、星を数えて」で語られている、東日本大震災での彩瀬さんの実体験を経て、それを小説に昇華させたような、彩瀬さんの祈りの物語があります。 「やがて海へと届く」は、一人旅の途中で震災に遭い消息を絶ったすみれにまつわり、その親友である真奈を…

「わたしの」美しい庭

凪良ゆうさんに「流浪の月」で衝撃を受けたので、最近出版された「わたしの美しい庭」を早速読みました。 特殊な事情のマンションに、何らかの生きづらさを抱えた人たちが集まっていて、その生きづらさと向き合っていく短編集です。 いやぁ、最高でした。「…

自らで特別を規定する

恋愛に限らず広く一般に、特別とか運命とかって、ある日どこかから突然降ってくるもので、出会ったときから特別だ、運命だ、って雷に打たれたようにわかるものだと結構最近まで思ってました。 そういうものに、幼い頃に物語を通じて触れて、憧れて、だけど現…

自己との孤独なたたかい

高野悦子さんとは、今回が初対面、というより、そもそも作家ではないので特殊な立ち位置に居られる方です。 今回、感想を書こうと思っている「二十歳の原点」は、この高野悦子さんの二十歳における日記をまとめたものです。本人の意思がなんらかあったのかわ…

互いの存在のすべてをふたりで支えあう

凪良ゆうさんとは、今回が初対面です。K島氏さんがtwitterで感想ツイートだったか何だったかを呟いていたのがキッカケです。ちなみにK島氏さんとは書籍編集者の方(たぶん東京創元社)で、米澤穂信さんの担当?みたいです。 今回感想を書こうと思っているのは…

やがて海へと届きたい

彩瀬まるさんとの出会いは、「あのひとは蜘蛛を潰せない」をタイトル買いして、主人公の価値観が私自身のそれと非常に近く衝撃を受けたことから始まっています。 彩瀬さんは、心理描写がとても繊細で素晴らしい一方で、それを丸々比喩的に、幻想的に描くこと…